9代目松本幸四郎(左)と初代松本白鸚(右) 1959年撮影 ©文藝春秋

 この年明け、1月2日に幕が開けた東京・歌舞伎座の「壽 初春大歌舞伎」にて9代目松本幸四郎、7代目市川染五郎、4代目松本金太郎が、それぞれ2代目松本白鸚、10代目幸四郎、8代目染五郎を襲名した。高麗屋三代がそろって襲名するのは、8代目幸四郎が初代白鸚を襲名した1981(昭和56)年以来、37年ぶりのことである(初代白鸚は翌82年、71歳で死去)。

 いまから40年前のきょう、1978年1月8日には、まだ市川染五郎を名乗っていた現世白鸚(当時35歳)の主演するNHKの大河ドラマ『黄金の日日』の放送がスタートしている。主人公は、安土桃山から江戸時代初めにかけて活躍した堺の貿易商・納屋(呂宋)助左衛門。原作は城山三郎の同名小説だが、市川森一の脚本と基本設定やストーリーを共有しながらほぼ並行して書き下ろされた。従来の大河ドラマの戦国物では、武将を主人公に据え、政治的動向に重点が置かれていたのに対し、この作品は経済の視点から、商人をはじめ庶民の動きを生き生きと描き出した点が画期的だった。

『黄金の日日』の出演者たち

大河ドラマ史上唯一の親子共演

『黄金の日日』には、8代目幸四郎も、遭難した助左衛門を救う八幡船の船長・高砂甚兵衛の役で出演した。劇中では、この甚兵衛が助左衛門の生き別れた父であることがほのめかされる。さらに最終回、徳川家康によって滅ぼされた堺から、助左衛門が新天地に向けて出航するシーンには、同じ船に乗り合わせた少年・助左の役で、当時5歳だった10代目幸四郎が本名の藤間照薫(翌79年、3代目松本金太郎を襲名)で出演している。主演者が実の父と子いずれとも共演したという点でも、本作は大河ドラマ史上唯一の作品だ。

ADVERTISEMENT

 なお、『黄金の日日』の放送を毎週熱心に見ていた一人に、当時高校生だった脚本家の三谷幸喜がいる。一昨年の大河ドラマ『真田丸』では、脚本を手がけた三谷のラブコールを受けて、9代目幸四郎が38年ぶりに助左衛門の役で登場し、話題を呼んだ。