柴田 可愛いだけのキャラクターにはあまり魅力を感じません。幼少期に少しだけアメリカで暮らしていた時期があったんですが、そこで見た『セサミストリート』がとにかく大好きで自分のルーツだと思っています。
アメリカの場合、ディズニーにしろ、ほかの作品にしろ、「可愛い」以外の要素を持ったキャラクターが多いじゃないですか。どこか奇妙なルックスや独自の色彩感覚がすごく魅力的なんですよね。奇天烈なキャラクターも許されているというか。
学生時代の美術の時間でも、風景を白一色で描いたら「山はちゃんと緑に塗れ」と怒られた経験もあるので、日本の環境には少し堅苦しさを感じていました。
「人」を描くのは、シンドイ作業だった
――ただ自由に絵を描きたかっただけなのに。
柴田 今は変わりつつありますが、固定観念を崩せないのが日本の特徴なのかもしれません。そう思うと、漫画家時代は無理に「人」を描いていたような気もします。
――人を描くのは嫌でしたか?
柴田 本当はイトウくんやタンノくんみたいな、人でも動物でもない「ナマモノ」をもっとたくさん描きたかった(笑)。
イラストレーターから成り行きで漫画家になったから、シンタローのような人間を描くときは、どう描いたらいいのかわからなくて。当時売れていた『ドラゴンボール』みたいな絵なら受け入れられるだろうと思って、シンタローが誕生したわけです。
――そんな裏話が……。
柴田 それくらい人を描くのは、自分にとってすごくシンドイ、窮屈な作業だったんです。元々、私はマニアックなものやB級なものが大好きで、美形キャラは範疇外(笑)。だから本当に好きなものしか描いていない今は、すっごく解放感がありますね。
タンノくんを全米デビューさせたい!
――最後に柴田さんがこれからやりたいことは?
柴田 海外でクリーチャーのキャラクターデザインをするのが夢なんです。そのために、まずは画家として海外でも名前を売りたい。すでに海外にも私の絵を買ってくれた方がいるので、不可能じゃないと思います。タンノくんをぜひ全米デビューさせたいですね!
柴田亜美
長崎県出身。『南国少年パプワくん』『ジバクくん』『PAPUWA』などの作品がTVアニメ化され、これまでの著書は累計発行部数2,000万部を超えている。2021年には「KOMIYAMA TOKYO」から画家としてデビューした。
写真=深野未季/文藝春秋
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