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 2015年、中国の習近平国家主席夫妻を国賓待遇で迎えた時のこと。同行したボディガードへの銃器の携行許可を求めた中国の高官たちが、イギリス側にこれを拒否されるや、「訪問を打ち切る」と言い放った。

「彼らは非常に失礼(very rude)でした」

 女王はその件をすでに耳にしていた。そして、イギリス側の関係者に「大変だったでしょう。彼らは非常に失礼(very rude)でした」と声をかけたのだ。女王が誰かに対して、ましてや大切な要人クラスにrudeを使うことはまずない。当日は雨降りで、女王のさしたビニール傘に音が反響して拡声器の役割を果たし、肉声が録音された珍しいケースだったといわれるが、報道されるやいなや大きな話題を呼んだ。

習近平と握手するエリザベス女王 ©共同通信

 また習主席訪英について、当時のハモンド外相は「成功」としながらも、「すこしだけストレスを感じた」と話す。中国の高官が、女王と習主席が乗る王室馬車に主席のボディガードを乗り込ませようとしたり、チベットの扱いなどに抗議するデモが主席の目に入らないよう、取り締まりを申し入れてきたりしたからだ。

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 しかし王室はそれらを受け入れることなく、ダライ・ラマ14世を敬愛するチャールズ皇太子に至っては晩餐会を欠席したほど。メディアは、英王室の「ものを言うロイヤル」への変化に大いに注目した。

 その外交手腕で人々から尊敬を集める女王だが、国民との関係が常に順風満帆だったわけではない。

 問題は、王室の内部に多かった。

英国王室ジャーナリスト・多賀幹子氏による「エリザベス女王 愛される理由」の全文は「文藝春秋」8月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

文藝春秋

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即位70周年エリザベス女王 愛される理由