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“ハイスペック人材”にならないと生き残れない? OECDの“ものさし”から抜け落ちているもの

『子育ての「選択」大全』#2

note

大人の役割

 生物学の有名な仮説に「個体発生は系統発生をくり返す」というのがあります。胎児が母体の中で、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類と進化するような形態の変化を遂げることを意味します。

 さらにこの世におぎゃーと生まれてからも、人間の知的な成長は人類の進化の歴史をたどります。

 幼児期は原始人です。原始的な言葉だけを使い、体験的に世の中を知っていきます。ですからできるだけ原始人のような体験をさせてあげてください。この時期、野山を駆けまわって、虫や小動物やお花や草木と戯れることが、この地球に生まれた生き物としての土台をつくってくれます。

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 泥だんごをつくるのは土器をつくっているようなものですよね。ドングリやカブトムシが好きなのもほとんど本能です。ドングリがなりカブトムシが育つ森があるということは、そこが人類も安心して暮らせる環境であることのサインだからです。

 火遊びが好きなのは、まさに人間になろうとしているということですから、大人が安全を見守りつつ、どんどんやらせてあげてください。すぐに枝を拾うのは道具を使う知恵の発達です。そのうち、その枝を加工するために刃物を使いたいと言い出します。まさに人類の進化です。少々の火傷やケガはこの時期にしなければいけない勉強です。

 小学生くらいまでは古代人です。論理的に考えるようになり、さまざまなことに疑問を抱きます。だから「なんで? なんで?」が続きます。文字や数字を使いこなすようになるのもこの時期です。

 古代人が潮の満ち引きや月の満ち欠け、太陽や星の運動に疑問を抱き、さまざまな説を考えたのと同様に、「なんで空は青いの?」「海の向こうはどうなっているの?」「虹の下はどうなってるの?」などの素朴な疑問が次から次へと湧いてきます。それに対して、ときには科学的に、ときにはファンタジーで答えてあげるのが大人の役割です。

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