沖縄県では7月末、新型コロナウイルス新規感染者数が連日5千人を越える深刻な状況が続いた。9月現在は2千人以下まで減少し、病床使用率も60%を下回るなど感染の沈静化が見られる。
それでも感染者にとって深刻な状況は変わっていない。対応する行政や医療従事者もいまだ混乱の只中にいる。
沖縄在住でライターの佐藤氏(30代)が新型コロナに感染したのは、「第7波」が流行中の8月末。これまで繰り返してきた幾度かの感染拡大期もなんとか乗り越えてきたが、ついに感染の波に呑み込まれた。
佐藤氏は一人暮らし。頼れる親戚も近くにはいない。混乱する行政、ひっ迫する医療現場、そしてなかなか陽性判定が出ない検査――。
厚労省の専門家組織は「第8波が来る可能性が高い」と懸念を表したが、それまでに準備できることは何なのだろうか。緊迫のコロナルポから考えたい。
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「わたし、このまま死んでしまうのかな……」
薄れゆく意識を、不安と恐怖が追いかけてくる。ひとりぼっちの部屋。ずきずきする鈍痛が、死の恐怖をさらに増幅させる。卒倒して転んだ時に床に打ち付けた頭の痛みだ。私は思いがけない熱病の苦しみと孤立無援の状況のただ中で、差し迫った生命の危機をリアルに感じていた。
新型コロナウイルスの感染が判明する前日昼のことだった。
のどの違和感でも平熱、PCR検査陰性
「何かおかしい」
最初に違和感を持ったのは、日曜日の朝。のどに違和感があった。すぐに「コロナ」の文字が頭に浮かんだが、身近に感染者はいない。体温を測ると平熱だった。
「ただの風邪だろう」。そう思いながらも、職場には持病があって、通院している職員がいる。万が一のことを考え、月曜午前にPCR検査を受けた。結果は陰性。相変わらずのどの調子は悪かったが、安心して普段通りの生活を送った。
急変したのは、その日の真夜中。息苦しくて目が覚めた。熱を測ると、39度を越えていた。
体が重い。めまいもする。今まで経験したことがない苦しさだった。薬箱に3回分だけ残っていた解熱剤を飲み、インターネットで再びPCR検査の予約を取った。夜が明けて、その日の夕方には、市内でドライブスルー検査を受けられることになった。
検査時間まで、とにかく眠ってやり過ごそう。そう考えて、ベッドでじっとしていた。昼すぎ、水を飲むため体を起こした。ベッドに座って、ペットボトルの残りを飲みきった。ふぅ、と息をついたときに、強いめまいに襲われた。
倒れる。
一人暮らしで、家には自分以外、誰もいない。誰も頼れない。心臓がドクンと波打って、冷静さを失った。