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ファンはいつでも待っている。嶋基宏は楽天イーグルスに必要な存在だ

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/10/05
note

「のちに監督とか。どうですか?」

 やはり2005年からのファンで、今シーズンも現地観戦は30試合を超えたという宮城県大和町の50代ご夫婦はこう語った。

「引退を聞いたときはショックでした。震災後のあのコメントは今でも映像が流れるとボロボロ泣いてしまいます。必ず戻ってきて欲しい。最初バッテリーコーチとかやって、のちに監督とか。どうですか?」

 仙台市内在住の21歳と16歳と14歳の三姉妹。お母さんと4人で観戦に来ていた。長女のマイヒーローは黒川選手、三女のマイヒーローは酒居選手。なんという渋いチョイス。これはガチファンではないか。そして何より……次女は嶋選手推しだったそうだ。

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「移籍した時も悲しかったけど、引退と聞いてもっと悲しかった。でも、やっぱりかとも思いました。野球を好きになるきっかけが嶋選手でした」

 嶋ファンになった理由を聞くと、即答だった。

「一目惚れです」

 そして以前私も取材したことがあった人気YouTuber「ほーみーず」のちばしんさんがいたので声を掛けた。オリックスファンYouTuberとして有名なB-モレル氏と最終戦を観戦に来ていた。試合後はさぞ大変だっただろう。

「イーグルスが弱い頃から支えてきたチームの中心選手。移籍した時以上に残念な気持ちになりましたが、指導者としてイーグルスに戻ってきて欲しいです。一番印象に残ってる試合は、2013年に田中将大投手の連勝記録を止めなかったサヨナラ打(2013年07月26日)。あの試合は現地で見ていて、バッテリーでヒーローインタビューも受けていて感動したのを覚えています」

もう言うまでもないだろう、嶋基宏は楽天イーグルスに必要な存在だ

  イーグルスは今シーズン、貯金18からの借金2という、歴史的大失速。屈辱的なシーズンになってしまった。なぜこうなってしまうのか。イーグルスには何が足りないんだろう。

 他球団の例を見てみよう。優勝争い常連のホークスには、松田宣浩という元気印がいた。連覇を成し遂げたバファローズには、能見篤史という投手陣にとってお手本のような存在がいた。去年まで2年連続2位と躍進したマリーンズには、球界の酸いも甘いも知り尽くした鳥谷敬がいた。そしてセリーグ連覇を成し遂げたスワローズには、嶋に内川。単に数字だけではない。そこには現れない部分でチームを支える存在というのが必ずいることに気付く。

  ここまで来たら、もう言うまでもないだろう。嶋基宏は、イーグルスに必要な存在だ。

  長いシーズン、どんなチームでも浮き沈みはある。でもここ数年のイーグルスは、一度沈むとなぜか二度と戻って来ない。チームが苦しい時、精神的に支えてくれる存在がいるとこうはならないのではないだろうか。もちろん、今そういった存在がいないわけではない。でもやっぱり、2011年の震災、2013年の歓喜、そしてチームの移り変わりも知る「嶋基宏」という存在は、楽天球団には不可欠なのではないかと考える。

 出来れば選手兼コーチとして戻ってきて欲しかったが…。それが叶わなくとも、どんな形でも、また東北に戻ってきて欲しい。ファンはいつでも待っている。

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