10月に入り、プロ野球界はここからさらなる盛り上がりを見せます。
クライマックスシリーズ――。そして、日本シリーズ。
日本一を目指し、両リーグの上位球団がしのぎを削るワケですが、同時にこの時期になると毎年、少し寂しいニュースも飛び込んできます。
そう、選手たちの引退です。
文春野球、今季ラストコラムは、かつて対戦したライバルと、ともに戦ったチームメイトの話を、少しだけしたいと思います。
「全力」で投げたボールを打ち返された、中日・福留孝介選手
まずは、福留孝介選手。
中日、メジャー、阪神、そして最後は再び中日でプレーした福留さんですが、僕にとってはやはり「ライバル・中日の主力打者」という印象が強いです。
その中でも強烈に憶えていることがあります。
何年の、いつの試合かまでは記憶にないんですけど……(苦笑)、中日戦で僕が先発したときのことです。先発をやっていたころの僕は、1試合を通じて「本気」で投げることはほとんどありませんでした。いつも9回を完投することを考えて、残りイニングと自分の体力を計算しながら投げていたからです。
ただ、この試合は良いピッチングができて、ちょっと余裕ができた。そこで打席に立ったのが福留さんでした。
「よし、ここは全力で投げてみよう」
当時、すでにセ・リーグを代表する打者だった福留さんを相手に、自分の全力がどこまで通用するか、試してみたかったんです。
正直に言うと自信はありました(笑)。あのころの僕は、「全力」で投げたボールを打たれた記憶がほとんどなかったからです。
ところが……。僕が思いきり投げたストレートを、福留さんはものの見事に打ち返しました。
「やっぱり、一流の打者はすごいなぁ……」
マウンド上でそんな風に思ったのを、今でも憶えています。