爽彩さんが亡くなった事と「関連は無いんじゃないですか」
――学校の認識として、イジメはなかったという事ですか?
「そうですね。警察の方から爽彩さんにも聴取して、『イジメはありません』と答えてます。それは病院に警察が聴取に向かって、聞き出したことで、学校が聞き出したことではないです。実際にトラブルがあったのは事実ですけど」
――改めてトラブルがあったのは事実だが、イジメではないということですか?
「何でもかんでも、イジメとは言えない」
――男子生徒が当時12歳の少女に自慰行為を強要して撮影することは犯罪ではないですか?
「当然悪いことではあるので、指導はしていました。今回、爽彩さんが亡くなった事と関連があると言いたいんですか? それはないんじゃないですか」
爽彩さんと加害者生徒らとの間に「トラブル」があったことは認めつつも、それが「イジメ」であるかについては否定。加害生徒に対して適切に指導を行ってきたと主張した。
だが、彼女が凄惨なイジメを受けた結果、医師からPTSDと診断され、その後遺症に悩まされていたのは紛れもない事実だ。
Y中学校の元校長が指摘する「家庭の問題」について、爽彩さんの母親に改めて話を聞いた。
「爽彩は一人娘で大事に育ててきました。ただ、とても繊細な性格で、宿題をやったのにそれを家に忘れたりすると、嫌になり学校から家に帰ってきてしまうこともありました。走って追いかけられたりするとパニックになることもあり、小学校のときに些細なトラブルがあり、事情をしらない先生が爽彩を走って追いかけてしまい、開いていた教室の窓から外のベランダに飛び越えたことがありました。校長先生はその件のことを言っているのかもしれません。しかし、それを自傷行為と捉えるのは間違いです。もちろんその後もケガもなく普通に授業も受けています。それからこれは(ウッペツ川に飛び込んだ事件で入院した病院を)退院した後に爽彩から聞いたのですが、川に飛び込んだときに『ママに会いたくない』と言ったのは、『警察が来て大事になってしまい、なんでこうなったのかを聞かれると思ったから』と話してくれました。
どこまで何をされたらイジメになるんでしょうか。警察に犯罪行為と認められてもイジメじゃないとまともに取り合ってくれないのなら、親はどうすればよいのか」
学校は子供の命を守る最後の砦といわれる。しかし、爽彩さんはイジメの問題が起きた当時、学校に守られることはなく、今年2月、わずか14年の生涯の幕を閉じた。元校長は加害生徒について、「子供は失敗する存在です。そうやって成長していくんだし、それをしっかり乗り越えてかなきゃいけない」と語ったが、同じ言葉を爽彩さんの墓前で述べることはできるだろうか。
子供の命を救う責任を放棄した教育の場に子供たちの未来はない。
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中学2年の少女を死に追いやったのは、誰か?
凄惨なイジメの実態、不可解な学校の対応――。遺族・加害者・関係者に徹底取材した文春オンラインの報道は全国的な反響を呼び、ついに第三者委員会の再調査が決定。北の大地を揺るがした同時進行ドキュメントが「娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件」として書籍化。母の手記「爽彩へ」を収録。