主婦と青年を勧誘せよ
同社は、相手を入信させ、教育し、献金させるまでの過程を「生産ライン」と呼び、フローチャートも作成。信者化した者の一部は、被害者から、加害者に回っていく。スタッフとして勧誘する人材についてマニュアルにはこう綴られている。
◆実践壮婦になれる人(30~50代)主婦/時間がある、経済的余裕
◆献身青年になれる人
高齢者と学生はペケ印が付く。元信者が補足する。
「実践壮婦とは、教団の活動を行う婦人信者。献身青年は集団生活をしながら勧誘や物販など、教団の活動に専念する若者。献身者とは、いわば出家信者です」
Tは、新世を「全国のモデル店舗」と自負。
「新世の売上は、約100社あった統一教会系の同種会社の中ではトップクラス。Tの作ったシステムとマニュアルは全国で利用されていた」(前出・捜査関係者)
金集めの手口は巧妙化
新世の摘発後、統一教会の徳野英治会長は、信者の関与を認めて引責辞任。09年11月、Tらは有罪判決を受けた。判決文ではこう断罪されている。
〈相当高度な組織性が認められる継続的犯行〉〈犯情は極めて悪い〉
刑事事件で教団との関係が認定されたのは、これが初めてのケースだった。
「教団本部にも強制捜査が入るのではないかと、内部は大混乱に陥っていました」(本部勤務だった元信者)
その後、教団は変わったのか。渋谷駅で勧誘を阻止し、新世の社員に殴打された経験のあるジャーナリストの鈴木エイト氏は、こう指摘する。
「信者に献金をさせ、見返りとして物品を授ける手法が主流となりました。商品が介在しないだけで、人の財産を収奪する本質は変わっていません」
むしろ、外部に向けたノウハウが封じられたことによって、内部の信者に対する献金の圧力はより強まったともいえた。
新世事件について、改めて統一教会に問うと「有限会社新世は当法人の信者が経営していた企業になります」とだけ回答。司法が認定した教団本体との関係を今も認めようとしない。
反省はなく、金集めの手口は巧妙化。これが統一教会の実体なのだ。