「特に2009年以降、コンプライアンスの徹底に努めております」
統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の田中富広会長は8月の記者会見でこう発言した。長らく被害を生み続けてきた統一教会の霊感商法。そこに警察のメスが入ったのが09年の「新世事件」だった。
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設立から10年間で売り上げは約7億
摘発されたのは、教団本部のお膝元である渋谷区にあった有限会社「新世」(解散済)。09年2月に警視庁公安部による家宅捜索が入り、同年6月、社長のT(当時51)以下、7人の社員が特定商取引法違反容疑で逮捕されている。
同社社員は、全員が統一教会の信者。渋谷駅の街頭で「先祖の因縁があなたの運気を悪くしている」「因縁を振り払うには印鑑を持った方がいい」などと通行人に声をかけ、印鑑を売り捌いていたのだ。
「印鑑は3本120万円が基本セット。立件したのは氷山の一角で、新世は設立から10年間で約7億円を売り上げていた。収益の大部分は、教団本体に還流していた」(当時の捜査関係者)
押収された霊感商法のマニュアルなど内部資料を入手
当時、教団側は「当法人と『新世』は無関係」とシラを切り続けたが、
「新世は教団の南東京教区傘下にあり、社長のTは教区長の下につく伝道部長。印鑑販売の顧客データは教区長に送られており、新世と教団は一体だった」(同前)
今回、「週刊文春」は、同社から押収された霊感商法のマニュアルなど内部資料を入手した。その中で新世は〈特別伝道部隊〉と呼ばれ、〈SKを出させるのが最高の教育〉などと記されていた。伝道は勧誘のこと。SKとは「信者献金」を意味する。つまり、新世は霊感商法を入口に、信者と献金の獲得を目的とする教団の前線組織だったのだ。