森山 僕の社交性は後から身に付いたもので本来は人見知りだと思っていたけど、そうではないと。
森山 信子さんとの出会いは2~3年前のことでしたよね。
中野 共通の友人がいて、偶然会って紹介され、その場で話が弾みましたね。
森山 著書も多くメディアにもよく出られていたのに、失礼ながら僕はよく存じ上げなかった。信子さんは、自分とは何なのか、人間とは何なのかということを命題として、人間の行動、言葉、創造、集団で生きている意味を追究されているのかなと感じました。
驚いたのは、東京藝大の大学院でアートも研究されていたことです。僕は身体を使って表現してきたけど、信子さんは科学的な説明だけでは収まり切らないところを表現で解放しようとしているということだった。
そこで一緒に新しい作品を生み出せないかと、信子さんと、僕の友人であるイスラエルの振付家・ダンサーのエラ・ホチルドに声をかけ、対話を重ね、滞在制作もして、まもなく作品をみなさんにお見せできるわけですが、その過程で試したのが、脳波を測定しながらのダンスです。
集団で生きていくことが宿命づけられている人間には、自分という境界線から解き放たれ、人とかかわりたいと感じる瞬間に出る脳波がある。その脳波が出せるパフォーマンスができるかどうか、というものでした。
中野 見事にその脳波が優位に出ていましたね。最も周波数帯域の高い脳波で、普通はあまり見られないのだけど。
そこで、未來さんの「理由は特にないけど安心な場所から飛び出してしまう」問題ですが、やはり未來さんは普通ではないのか。いや、人間は本来、そうあるべきだと私は思う。例えば、ホヤを考えてみましょう。
森山 食べられるホヤ?
中野 珍味のホヤ。あれは岩にへばり付いているけど、幼生のときは浮遊して固着先を探しています。そのときは脳のようなものを持っているんですが、岩に固着すると脳を食べてしまうんです。
森山 えっ、自分の脳を食べちゃう!
中野 なぜだと思う?
森山 要らないから。
中野 そうなの。正解。
森山 ホヤには考える必要がないのかな。