脳科学とコンテンポラリーダンスを融合した異色のパフォーマンスをこの秋に計画中の、中野信子さんと森山未來さん。幼少期の体験を基にした森山さんの人生相談を皮切りに始まった二人の対談を『週刊文春WOMAN2022秋号』から一部紹介します。
◆◆◆
森山 ご相談したいのは、「自分の行動原理がわからない」ということです。僕は自分でも説明のつかない行動をとることがあって、どうしてそんなことをしたのか、何かしら理由の後付けをしようと思えばできるけど、突き詰めれば、ただそうしたかったから、としか思えない。遡れば2歳ぐらいからそんな感じだったような気がして。
中野 きっとそれは正しい記憶ですね。記憶を司る脳である海馬は3歳頃までは不完全にしか機能しないと考えられていますから。
森山 2歳の僕が何をやらかしたかというと、9つ年上の姉とふたりで留守番をしていた。姉がうたた寝をしていた。両親が帰宅すると、僕がいなかった。探しに探し回ってもいない、これは大変やということで通報した。すると、まさに電話した先の警察署で保護されていて、僕ときたら泣くでもなく、お巡りさんからお菓子をもらって食べていたんです。
僕にはそういう突発的な行動というか、理由は特にないけど安心な場所から飛び出してしまうということが、今も変わらずある。
中野 警察署で泣くでもなく、お菓子をもらって食べていた……。人見知りしなかったんですね。
森山 まず、そこですか!?
中野 実は重要なポイントなんですよ。
森山 人見知りしますって、僕。
中野 いやいや。ご自身でそう思ってはいても、他の人と比べればオープンだということがあるかもしれません。お悩みへの回答の前に、少し未來さんの脳の話をしましょう。ちょっと変わってます。
森山 今年1月に初めて僕の脳波を測定してもらったときは、ちょっとではなく「だいぶ、おかしい」と言われました(笑)。
中野 すみません(笑)。普通は少し緊張していることを示すような脳波が見られるんだけど、未來さんはガンマ波がずっと見られて、珍しいな、壁をつくらない人なんだなと思った。それで、人見知りしないのは2歳の頃からずっとそうなのかと思って。