「依田容疑者は気に入ったメーカーがあったと話していて、例えば360点のうち約50点は同じカーキ色の雨がっぱでした。子供用のシートを設置した自転車に干して乾かしている雨がっぱを盗むだけではなく、女の人が自分好みの雨がっぱを着ているのを見かけると、後ろからつけ回して、脱いで自転車のカゴに干すのを見届けたうえで、盗むこともあったといいます。そうして築いたコレクションは、自宅で綺麗に畳んでしまっていたようです」(前出・全国紙社会部記者)
大阪府警では依田容疑者のことを「かっぱ男」と独特のあだ名で呼びマークしていた。だが、近隣住民にとって依田容疑者の印象はかなり薄かったようで、「静かな人」「すれ違っても挨拶もしたことがない」と評している。それでも雨が降った日の翌日、数着の雨がっぱが容疑者の部屋のベランダに干されている光景を覚えている住民もいた。
大胆な盗みの手口
そんな物静かで目立たぬ生活を送るのとは裏腹に、盗みの手口は大胆だった。窃盗被害は大阪市内だけでなくお隣の東大阪市など広範囲に及び、大阪府警も相当手を焼いたという。盗難被害が発生した駐輪場の管理者が話す。
「阿倍野周辺ではかなり広範囲にわたって、雨がっぱが盗まれる被害が続出していました。朝から自転車に乗ってやってきて、駐輪場の自転車をチラチラ物色して数分で出ていく怪しい男がいるなとは思っていたんです。今年に入ってから、警察官が『防犯カメラ見せてください』とある日やってきて、依田容疑者がうろつく様子を確認していました。それからは、雨の日になると、ずーっと張り込みをしていましたよ。依田容疑者は長い時には半日もの間、雨がっぱを探して自転車で大阪中を徘徊していたようです。決定的な瞬間を抑えようと、警察官も雨の中、かっぱを着込んだ依田容疑者を後ろから自転車で追い続けていたようで、『全くかないませんよ』と呆れ顔でした」