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「断食道場でプログラムをこなすうちにハイに…」 岡村靖幸が作家・村田沙耶香と話す“信じる快楽”

「断食道場でプログラムをこなすうちにハイに…」 岡村靖幸が作家・村田沙耶香と話す“信じる快楽”

岡村靖幸×村田沙耶香

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岡村 おみくじで「凶」が出たらどうします? 僕は「大吉」が出るまで引き続けますが(笑)。

村田 いろいろ欲を出してしまったのを神様は見抜いてらっしゃる、と思いますね。戒めだと。

無宗教を「無」という神様を信じる宗教だと思っていた

岡村 そういえば、村田さんはお父さんが元裁判官でいらっしゃると聞きました。理知的なご家庭だったゆえの宗教観ですか?

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村田 うーん、理知的かどうか。ただ、宗教に関して言うと、小学生のとき、クラスで自分の家の宗教が話題になったことがあったんです。「それぞれの家には、それぞれの神様がいるらしいよ」と。で、父に聞いたんです。「うちは何教なの?」って。そうしたら「うちは無宗教だよ」と。私はそれを、「無」という神様を信じる宗教だと思ったんです(笑)。すごい神様だって感動しました。それからは、「無」に祈るようになって。

 でも、「無」ってなんだろうともっと知りたくなって、父に「『無』ってどんな神様?」と聞いたんです。すると、父がすごく慌てて、「いや、『無』の神様はいない。神様はいない、なにも信じてない、ということなんだよ」と。「だけど、お父さんは一応仏教で、君ら子どもたちは大人になってから自分で何を信じるかを決めなさい」と。すごくショックだった。ずっと「無」に祈ってたのに。いままでの祈りは何だったんだろう! って(笑)。

 

岡村 あはははは(笑)。

村田 ただ、いまもそのときの神様のイメージが頭の中にはあるんです。小説を書き始めた小学生の頃、書いたものが自然と神様のもとへ届き、神様がその中からどれを世に出すのかを選ぶ、そういうシステムで本って出版されると思い込んでいたので、ずっと神様に向けて書いていました。だから、やっぱりすごく祈ってるんです、いまだに。精神世界にいるときに感じている神様に。

※現実の輪郭を揺さぶる“村田沙耶香ワールド”に岡村さんが共感する理由や、村田さんを支えるイマジナリーフレンドの存在、岡村さんが忘れられない「罪」など、対談の続きは『週刊文春WOMAN2022秋号』に掲載されています。

週刊文春WOMAN vol.15 22年秋号(文春ムック)

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text:Izumi Karashima photographs:Takuya Sugiyama hair & make-up:Harumi Masuda(Okamura)

むらたさやか/1979年千葉県生まれ。作家。玉川大学文学部卒。2003年に『授乳』で群像新人文学賞優秀作を受賞し、デビュー。2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は、38の国と地域で翻訳され世界中で親しまれている。カルトを描いた最新作『信仰』(文藝春秋)が発売中。

おかむらやすゆき/1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。歌人の俵万智の指導のもと、短歌の創作に挑戦する企画をオフィシャルモバイルファンクラブにて連載中。11月18日より9都市11公演の全国ツアー「岡村靖幸 2022-23 AUTUMN-WINTERツアー『アパシー』」を開催予定。

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