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若本 それはもう健康ですよ。だから、そこはわがまま言わせてもらう。夜はもう仕事はカンベンしてもらって、早く帰って寝て、朝は4時、5時に起きる。そのペースを崩すとダメなんで。食べる量も少食多彩をモットーにね。

 1日の生活というものを深めていかないと……。それは声優だけじゃないでしょう? ぴっちり決めたことをやる生活を送っていくと、だんだん焦点が定まってくる。

 でもね、この仕事は技量が上がって深まっていけば、おもしろい仕事ですよ。クライアントも喜んでくれるしね。人助けでもあるんだよ。

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 特にCMなんか、莫大な金をかけて作ってるわけだから。とことん最高品質なものを提供しようと。でも、そんなに長居はしないよ。最初から中心を突いていくから。小出しになんかしない。

――即座に、力を尽くすと。

若本 ナレーション台本に対して、「こんなフレーズは耳に入ってこないよ」って……どんどん知恵を出し合って修正していく。CMはお互いに戦いなんだよ。

 時には波風立てなきゃ良いものはできない。日本人は総じて波風立てないからね。でもこれからは、波風大いに立てなきゃダメだよ。声を荒げるとか、喧嘩をするっていうことじゃなくて、書き言葉ではわかっても、耳には入ってこないっていう言葉がある。そういうものをときほぐして、修正して良い作品に仕上げてゆく。

 声優はそういう能力も必要になってくる。出されたものをそのまま読むなんて、そんな楽な仕事は誰だってできる。出されたものを、さらに価値をつけて返す存在でありたい。

声優人生を振り返って

――これから80代、90代、100代とご活躍が続きそうですね。

若本 わかんないよ、それは(笑)。寿命ってのがあるからね。でも、先輩の羽佐間道夫さんは89歳だから、そのへんをまず目標に置いてね、追いかけて行こうと。

――最後に、声優人生の中で一番幸福だったことはなんですか?

若本 混沌としたジャンルの仕事のなかから、必然の偶然、偶然の必然と呼べるようなものに出会えた。僕にとって、声優の道に歩み出せたことそれ自体が幸せだったと言えるのでは。難しい壁にぶち当たって、いろんなことに挑戦できたことが、幸福だったんじゃないかな。

(写真:シグマ・セブン提供)

若本規夫のすべらない話

若本 規夫

主婦の友社

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