昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「僕は根回しとかできないから…」大学時代は落ちこぼれ、警察官だった過去も…組織に馴染めなかった若本規夫(77)が「声優」という天職にたどり着けた理由

声優・若本規夫インタビュー #1

2022/10/18

 大学時代は落ちこぼれ。卒業後、警察官や団体職員の仕事に就くも、組織になじめず数年で退職……。そんな青年が「この仕事ならのし上がっていける」と出会った天職が、声優だった。

 声優・若本規夫さん(77)が、偶然のようなチャンスをつかみ続け、国民的アニメ『サザエさん』のアナゴ役に選ばれるまでの道のりについて聞いた。(全3回の1回目/#2#3を読む)

若本規夫さんはなぜ「声優」という天職を掴むことができたのか? その数奇な人生を追った(写真:シグマ・セブン提供)

◆◆◆

「何もない人生なんて、つまらない…」

――自伝『若本規夫のすべらない話』を読んで、若本さんが紆余曲折を経てブレイクに至ったお話には驚きました。

今年3月、初の自伝『若本規夫のすべらない話』を出版された若本規夫さん(画像:主婦の友社より)

若本規夫さん(以下、若本) 誰でもそうだけど、人生っていうのは、バイオリズムとでもいうか低調になるときがあるよね。そこでくじけずに、目の前にあることをしっかりやっていくことで、また上昇してくるんだよね。

 それをどう克服するかが人生。何もないなんてつまらない……。たとえば、良い家庭に生まれて、良い両親に恵まれ、良い学校を出て、良い会社に就職して、理想的な女性と結婚して、幸せに暮らして死にましたとさ、という映画を作りたいと思う? それを見たいと思う?

――思わないですね。

若本 なぜだか分からないけど生まれ落ちたときから必ず、人間には「壁」ってものがつきまとうんだ。それが、宿命なんだよね。その時点では苦しいけど、苦しい裏にすぐ夜明けがあるかもしれないんだ。この77年生きて振り返ってみると、幸せと不幸せがね、背中合わせというか……。

 バーッと幸運があってね、ワーッと浮き立ってるときが怖い、仕組まれてるんだよね。誰が仕組んだか知らないけど、そのようになっている。それを受け入れて立ち向っていくしかない……。

 僕も声優人生の中で、有頂天になったことがある。でも、ジェットコースターじゃないけど、バーンっと逆さまに落ちるんだよね。人生ってのは、みんなそんな境地を味わうようにできているようだね。

チャンスをつかむために必要なもの

――仕組まれているといえば、様々な職業を経て、若本さんが声優になったきっかけも運命的でしたね。

若本 そうだね。必然の偶然というかな。77年間生きていて、振り返ってみるとそういうことが無数にある……。

――チャンスをつかみとるための感度も重要だ、と。

若本 そう、自分はどういうふうにしたら道を作れるかを、絶えず求めてないと、チャンスは出てこないんだよね。それも、自分からワーッと求めていくんじゃなくて、自分が空っぽになる。

 たとえば、僕は早稲田大学の法学部に行ったんだけど、法律の勉強なんか全然しなかった。最初の3か月でまったく興味ないとわかったから。出欠を取る授業だけ出て……。だから成績は良いわけない。

――そうだったんですね。