2021年6月、大阪のカラオケパブで稲田真優子さん(当時25)が刺殺された事件。2022年10月12日、宮本浩志被告(57)の論告求刑公判が開かれ、検察側は無期懲役を求刑した。 

 これまでの裁判で宮本被告は「判決は死刑をお願いします」「被害者遺族の意図を汲むならぜひとも死刑を下していただきたい」「私についてはいかなる質問についても答える気はありません」などと異例の主張をしていた。

 稲田さんの身に一体何が起きたのか。真相解明の一助になることを願い、当時の記事を再公開する(初出2022年9月21日、肩書き、年齢等は当時のまま)。

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 2021年6月11日にカラオケパブ「ごまちゃん」(大阪市北区)の経営者だった稲田真優子さんが殺害された事件の初公判は、大阪地方裁判所の201法廷にて9月16日に開かれた。殺人の罪に問われている宮本浩志被告(57)が裁判員に向かって「死刑をお願いします」と言い放つ衝撃の幕開けとなったこの初公判で、検察は被害者の交際相手の供述調書を読み上げた。

「『ラブリッシュ』時代から、まあ(交際相手の男性の稲田さんに対する呼び方)は“ウェザー”のことを『結婚して子どもがいる』『○△の団地に住んでいる』『新大阪で働いている』などと話していました」

 ウェザーとは稲田さんと交際相手の間で宮本被告のことを指す“隠語”で、毎朝のように天気予報をLINEで送っていたことに由来していたという。

亡くなった稲田さんと宮本被告のLINE お天気情報を宮本被告が一方的に送っているのがわかる 遺族提供

「ウェザーはまあに、LINEで尋常じゃない数のメッセージを送ってきていました。私とまあが一緒にいる時に電話をしてきたこともありました。『ごめん、ウェザーから電話が来た。すぐに終わらせるから』と言って、電話していました。ウェザーと電話することについて、『ほんまに喋るのいや。そもそも喋ることないし、気持ち悪い、気持ち悪い』などと話していました」

「ウェザー」の調書が読み上げられる間、被告は一点を見つめ…

 確かに、稲田さんへのLINEメッセージを辿っていくと、毎朝の連絡では天気予報が欠かさずに書かれており、6月に入ってからは「熱中症に気をつけてください」といったメッセージも多い。

宮本被告の「いろいろ言うのは、家族同様に大事な人だから」というメッセージ 遺族提供

 法廷で、好意を寄せていた相手に「ウェザー」と揶揄されていた事実を知ることは、被告にとって決して気分が穏やかではないはずだ。そもそも稲田さんに交際相手がいたことを知っていたのだろうか。

 検察官が調書を読み上げるのをメモしながら、私は時折、被告人席に座っている宮本被告を凝視した。じっとして動かず、視線は一点を見つめている。マスクで表情ははっきりとしないが、動揺は見て取れなかった。