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――8巻でフィクション宣言を出す前に、7巻にワンクッションが入ってるんですね。

日渡 そうなんです。ちなみに《この作品はフィクションで……》という注意文の先駆けは、三島由紀夫氏の小説『宴のあと』らしいですね。その後、さいとう・たかを先生原作の特撮ドラマ『超人バロム・1』でも、ドルゲ事件(*)以後、テロップが使用されたようです。

 最近もSNSで騒がれていた作品があったようです。いつの時代も年齢に関係なく、フィクションと現実の境の見極めは難しい……という事実は、変わらないのかもしれません。

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*ドルゲ事件 1972年、『超人バロム・1』の悪役・ドルゲと同姓のドイツ人が、「番組のせいで子供がいじめられる」と放送局に抗議。後日、作品がフィクションである旨を記すテロップが番組内に挿入された。

徳島の自殺ごっこ事件とフィクション宣言の関係

――現在、ウィキペディアの《戦士症候群》の解説には、1989年8月に徳島で小中学生の自殺ごっこがあり、それが『ぼく地球』の「フィクション宣言」に少なからず影響したように書かれています。これは事実なのでしょうか。

日渡 世間から見ると、私のフィクション宣言は、その事件がタイミング的に影響したように感じられたのだろうなと思います。

 でも実際は、コミックス7巻が出たあたり(1989年7月)から、私と担当氏の間では「本当はキッパリ、警告文を書いたほうがよいのかもしれないよね」という話をしていました。私自身の手で宣言文を書こうと思うタイミングと、徳島の事件の時期が重なったという偶然があるとは思います。

――そうでしたか。

日渡 ただ、もし徳島の事件がなかったとしても、8巻にフィクション宣言は書いたと思います。読者さまにとっても今では黒歴史であろうなぁと思われる(笑)内容のお手紙が、当時はあまりにも多かったですから。

『ぼく地球』の設定上では、《自殺をすると転生できない》というセーフティ設定を盛り込んではいたのですが、難しいものだなぁと当時、実感しました。

――そうでした。木蓮(亜梨子の前世)の「自ら命を絶たないで」という言葉のために、紫苑(木蓮の伴侶)は一人で生き続けますね。

『ぼくの地球を守って』©日渡早紀/白泉社

日渡 徳島の事件に『ぼく地球』が影響したかどうかはともかく、当時の少女おふたり様が無事で本当によかったです。今では事件をきっと封印なさって、元気にお暮らしでいらっしゃることを切に望みます。