10月18日に開催した「デビュー40周年記念 日渡早紀原画展」。「ぼくの地球を守って」(通称「ぼく地球」)など、マンガ家・日渡早紀氏による作品の原画やマンガ原稿を展示している。

「ぼく地球」といえば、SF少女マンガのパイオニア的作品。連載当時、作品に没入しすぎるあまりに現実とマンガの世界の境目が曖昧になってしまう読者も。この事態に、作者が前代未聞の“フィクション宣言”をするに至った。

 社会現象を起こし、そして40年にわたって愛される作品はいかにして生まれたのか。日渡早紀氏のインタビューを再公開する(肩書、年齢は当時のまま。初出/2022年5月28日)。

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 日渡早紀は1982年に雑誌『花とゆめ』でデビューし、今年画業40周年を迎えた。“女子高生・亜梨子(ありす)は、異世界の女性「木蓮」の生まれ変わりだった──”メガヒットSF作品『ぼく地球』シリーズは3部作で、第1部『ぼくの地球を守って』は1986年から7年半連載、第2部『ボクを包む月の光』は2003年から12年連載、そして現在、第3部『ぼくは地球と歌う』が2015年から連載7年目となる。

 画業人生の約4分の3を『ぼく地球』シリーズに充てる日渡だが、80年代の少女マンガ界では《異世界転生》は異端だった。このジャンルを少女向けに切り拓いた日渡が、今も同シリーズを描き続ける理由、そして、現在の異世界転生モノに思うこととは。(全3回の2回目/1回目を読む

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『ぼくの地球を守って』©日渡早紀/白泉社

『ぼく地球』と“なろう系”の決定的な違い

――『ぼく地球』の連載が始まった80年代後半、少女マンガ界では《異世界転生》というテーマはまだマニアックな扱いでした。現在は異世界転生がマンガやラノベで一大ジャンルを築いていますが、どうご覧になりますか。

日渡 異世界転生ジャンルについては、いわゆる一般的な“なろう系”と、『ぼく地球』の転生設定は、世界線が違うと思っています。

――というと?

日渡 『ぼく地球』は前世人格と転生後の人格が異なり、別人格として設定しています。前世の木蓮と転生後の亜梨子(ありす)は別人格です。

“なろう系”の転生はおそらく、前世も転生後も同人格、というのが大半ですよね。私は選ぶ世界線がちょっと違うので、この界隈でさえもたぶん異端者なのではないかと思われます。

――そうか、輪(りん:亜梨子の隣家に住む小学生)は特に前世人格に振り回されますね。

『ぼくの地球を守って』©日渡早紀/白泉社

日渡 そもそも同人格のほうがスッキリして考えやすいのだろうなぁと思いますし、読む方もそうかもしれませんよね。

 それなのに、当時の読者さまは熱心にお読みくださって、しかも、読み継いできてくださいました。信じられない。本当に心から感謝しております。

――“なろう系”では転生・転移後に特殊能力を得る《チート展開》がよくありますね。一方、『ぼく地球』では輪をはじめ、特殊能力を持って転生した自分に翻弄され、葛藤するシーンが見られます。

日渡 あぁ……本当にそうですねぇ。私の話は、今の異世界転生チート系とは逆行してますね。なんでだろうなぁ。