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「ヤクザも恐れるチャイニーズドラゴン」

「一部の怒羅権は密入国者たちに日本の裏社会での生き残り方や人脈を授け、密入国者は暴力と中国本土とのコネクションを差し出したわけです。そして、彼らが薬物の密輸などのシノギで勢力を拡大させていく中で、権益を巡って暴力団とぶつかることもあった。そこで暗躍したのが、本来は“いない人間”であるはずの密入国者たちだったんです。人を殺しても中国に逃げ帰ってしまえばいいということで、10万円で殺人を請け負うなんてことがありえる時代だった。

 実際に中国人によってヤクザが射殺される事件が起こったこともあります。さらに当時、ドラゴンには4つの派閥があり、それぞれが独立して活動していましたが、抗争となればすべての派閥のメンバーが招集された。こうした背景があり、『ヤクザも恐れるチャイニーズドラゴン』という凶悪なイメージが一般に定着していきました」(同前)

写真はイメージです ©iStock.com

勝手にドラゴンを名乗る連中が現れ全体像が把握できなくなった…

 こうして名前が知られるようになるにつれ、勝手に「ドラゴン」を名乗る不良外国人グループの存在も増えていったのだという。

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「ドラゴンは代紋を掲げているわけではなく、上納金システムがあるわけでもない。気づけば様々なところで『ドラゴン』と名の付くグループが乱立する事態になってしまった。そもそも4つの派閥だって基本的にはシノギ単位で協力し合う程度の関係でしかなく、暴力団のような明確な指揮系統があったわけでもない。

 そこに勝手にドラゴンを名乗る連中が次々と現れてしまい、警察はもちろん、怒羅権の初期メンバーですら全体像を把握しきれてなくなってしまった。チャイニーズドラゴンなんて、あたかも統制が取れたデカい団体みたいに思われているところがあるが、そんなのは幻想です。今も現役ドラゴンの代表とされる人物はいるものの、すべてのメンバーを組織として束ねているわけではありません」(同前)