「小説は何かを訴えるための道具ではない」
との反論も出ました。当然、どちらが正しいということはありません。参加している高校生たちがその場で議論を重ね、そのつど答えを探していくことになります。
高校生直木賞は「読んで終わり」ではなく、「読んだその先」が本番です。自分の感想を「人に伝える」ために整理し、論理的に語れるよう努力します。同時に、他の高校生の考えに耳を傾け、理解しようと試みる。考えを深め、新たな感動を発見するところまで含めての高校生直木賞なのです。
『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)で第9回高校生直木賞を受賞した逢坂冬馬さんから、高校生のみなさんへのメッセージをいただきました。
逢坂冬馬さん
僕はあまり本を読まない高校生でした。だから、まず6冊もの小説に真剣に向き合えることが立派な姿勢だと思いますし、読書でもそれ以外の何かでもひとつの物事に関してそこまで打ち込むことは非常に良い思い出になるはずです。
高校生直木賞には部活や委員会に限らず、学校内の有志で集まって参加することもできると聞きました。その気軽さ、オープンさも良いですね。今回参加された皆さんほどの情熱を傾けていたら、自然と読書を好きになると思いますし、これからも参加校がどんどん増えてほしいです。
第8回の受賞者、伊吹有喜さん(『雲を紡ぐ』文藝春秋)と加藤シゲアキさん(『オルタネート』新潮社)の受賞時のコメントもご紹介します。
伊吹有喜さん
本の世界は果てしなく、ページをめくれば古今東西のあらゆる出来事を体験し、たくさんの登場人物たちと心を通わせることができます。これからも本の旅をぜひ続けていってください。皆様の道中が喜びに満ちたものでありますように! そしてその中の1冊にこれからも私の作品が入っていたら、このうえなく光栄で嬉しいです。
加藤シゲアキさん
受賞の知らせを聞いた時、不意に『荒野の果てに』が頭の中に響きました。『オルタネート』は、若い世代に読書の楽しみを知ってもらいたいと思って書いた作品です。作家になってから時折、「加藤くんの本を読んでみたいけれど、小説は難しくて読めない」と言われることがあり、それを聞く度に彼らは幼い頃に楽しい小説に出会えなかったんだろうなと感じていました。ならば自分が、若い世代が純粋に楽しめる作品を書き、小説を好きになってもらおうと考え、このような高校生の群像劇を執筆するに至りました。自分の願いが叶い、実際に高校生の方々に届いたのであれば、これ以上に幸せなことはありません。
世界には素晴らしい本がたくさんあります。読者の方々には、この本をきっかけに、人生最高の1冊と出会う旅に出発してほしいと思います。
決して敷居の高いイベントではありません。文芸部、図書委員などの単位で参加される学校が多いです。ぜひ顧問の先生、司書の先生は、ご検討をお願いします。
これまで、高校生自身の熱意で初参加に至った学校もあります。「高校生直木賞に参加してみたい!」と思った高校生のみなさんは、友達を誘って、身近な先生を説得してください。
第10回高校生直木賞に関するオンライン説明会を、11月12日(土)17時より開催します。
応募の方法、具体的な選考の流れなどについて丁寧にご説明しますので、興味のある先生方、生徒さん、保護者のみなさんは、どうか気軽にご視聴ください(アーカイブ視聴もあります)。
※もちろん説明会に参加しなくても、高校生直木賞にご応募いただけます。
来春、多くのみなさんと小説について議論できるのを楽しみにしています。
高校生直木賞実行委員会