古都・京都は四方を山に囲まれた盆地にある町だ。そのせいで冬は寒くて夏は暑いという、なんでこんな場所に都を置いたのかと古の人に文句を言いたくなってしまう。が、昔の人にとってはそんなことはたいした問題ではなかったのだろう。四方が山に囲まれている方が、守りにはよい。

 そんなわけで、平安京の時代から1000年経ったいまも、京都から他の町に出るためには山を越えなければならない。たとえばJRの新快速に乗って東、府県境を跨いで滋賀県に向かおうとすると、東山トンネルと新逢坂山トンネルというふたつのトンネルを抜けることになる。

 ふたつのトンネルに挟まれた山科という駅を挟んで約10分。滋賀県に入って最初の駅が、県都大津市のターミナル・大津駅である。

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“ナゾの県庁所在地の駅”「大津」には何がある?

 “ナゾの県庁所在地の駅”「大津」には何がある?

 県庁所在地の玄関口たるターミナルというと、京都駅はもちろんのこと、ほかにも横浜駅に大阪駅、博多駅、札幌駅、広島駅……と、名だたる大ターミナルばかりだ。ならば大津駅も、と言いたいところだが、実際はまったく違っている。大津駅は、県都のターミナルにしては実に小さくシンプルな駅なのだ。

今回の路線図。県庁所在地にもかかわらず圏内では第4の駅になる「大津」

 それは数字にも表れている。2021年度の乗車人員でいうと、滋賀県内において大津駅は第4位。草津・南草津のツートップに加えて、同じ大津市内の石山駅の後塵も拝している。それだけをもっても、県都の玄関口のターミナルという肩書きからイメージされるそれとはだいぶ違うことがわかるだろう。

 で、実際の大津駅はどんな駅なのだろうか。

京都駅から新快速でやってきた。ホームの端っこには…

 京都駅から新快速電車でやってきたので、降り立ったのは2番のりば。島式ホームが2面並ぶ、ごく一般的な構造の駅だ。その2番のりばのホームの端っこには、とあるオブジェがあるという。

 

 改札口に向かう他のお客の流れに逆らって、京都方のホームの端っこへと歩く。すると、なんだか青くて丸いボールのようなオブジェ。近づいて見ると、北緯35度線のモニュメントだという。つまり、この大津駅の構内にちょうど北緯35度線が通っている、というわけだ。

 

 まあ、その……だからどうしたという以上のことは言えない。北緯35度線は別に目に見えるわけでもないし、軍事境界線になっているわけでもない。

 でも、そうしたオブジェをホームに置くということは、それなりにシンボリックなものなのだろう。ホームから改札に向かう通路でも北緯35度線について紹介されていた。何が町の自慢になるかはそれぞれなので、こちらから文句をつけるほどのことでもまた、ないのである。

 そんな大津駅だが、個人的には北緯35度線以上に気になることがある。