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“大間まぐろ”商標はなぜ1カ月で方針転換したのか 漁協トップが語った

「ここ(大間沖)にマグロはいねえから」

 漁協の組合員は、約700人、そのうち約120人がマグロ漁業に従事している。漁師たちを束ねるのが、今年3月から漁協のトップを務める小鷹勝敏組合長だ。現地で甚野氏の取材に応じ、経緯をこう説明した。

「要するに、この辺に(マグロの餌となる)イカとかサンマが来なくなって。そうなると、大間の船はマグロ漁で生活できなくなる。だから広範囲に場所(漁場)を探して、結局、太平洋の方が獲れるから、向こうさ行って獲ってきたんだ。ここ(大間沖)にマグロはいねえから。向こう(太平洋)で獲ってきたのが高値で1万5000円(1キロ)さ。この辺は餌がないからマグロの脂の乗りが悪い。ここで獲って3000円、向こうで獲って1万円なら、当然向こうで獲ってくるさ。(売値が)高(たけ)え方がいいってのが我々漁師の考えだから」

尾を切って鮮度を見る ©郡山総一郎

「大間まぐろ」の定義を厳密にすれば、いい大間まぐろが獲れない。商標登録を巡る方針転換の背景には、こうした実態があったというのだ。さらに甚野氏が「大間で水揚げされるマグロのうち、太平洋など大間沖以外で獲れた割合はどれぐらいなのか?」と聞くと、口ごもりながら、こう語った。

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「大間の船が向こう(太平洋)さ行って大間沖の何倍も獲ってるって報道されれば、それはちょっと、うまくないです。騒ぎになるから、私は言いません」

 そして、さらに付言した。

「毎年の初セリあるでしょ。あのマグロは昔っから、ここで獲れたマグロ。本当の大間で獲れたもの」

2020年の初セリでは大間まぐろに1億9000万円の値が ©共同通信社

 11月22日(火)12時配信の「週刊文春 電子版」、および11月24日(木)発売の「週刊文春」では、漁船の位置情報データを収集した甚野氏の取材、小鷹組合長のさらに詳しい証言、また漁協の方針とは違った考え方でマグロ漁に臨む若い漁師の肉声、カメラマンの郡山総一郎氏によるマグロ漁の写真なども含め、グラビア&特集で計5ページにわたって詳しく報じている。

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