峰 それより驚いたのが、私が漫画に「なんでみんなもっと無痛分娩を選ばないわけ?」って描いたら、読者の反響で「普通分娩の痛みを味わってみたかったから」って意見が多かったことです。世の中、痛いことなんて他にもいっぱいあるのに「なんで?」って。
――確かに謎です。どうして出産の痛みだけ体験してみたくなるんでしょうね。
峰 じゃあ内臓をグサグサ刺される痛みも味わってみたいのか? と思っちゃいます。本当に謎ですね。無痛分娩の費用だけなら10万円くらいですし、みんなもっと無痛分娩にすればいいのに。
ただ、無痛分娩をやってくれる病院って数も少ないし、もともとの入院費用が高いっていうのもあるんですよね。そういう意味でハードルを感じる人の気持ちはもちろんわかるんですが。
――それで無痛分娩を選択されたわけですが、出産前もいろいろ大変だったんですよね。4月に産むために3月中は無痛分娩を行わず、我慢する期間があったとか。
峰 たとえば6月や7月の予定日だったら、妊娠38週に入ったら即産んでたはずだったんです。でも予定日が2020年4月5日だったので、「早生まれ」にあたる3月ではなく4月に産みたいと思ってギリギリまで我慢しました。
3月生まれの子と4月生まれの子だと、同じ学年でも1歳近く年が離れていて、特に小さいうちは体格もできることも結構違うんだそうで。4月生まれのほうが自己肯定感が育まれやすいというのを、幼稚園に勤務するパートナーのチャラヒゲから聞いていたんです。大人になったら大した差じゃなくても、子どもにとっては大きいじゃないですか。
――なるほど。ただその「我慢期間」もすごく大変だったとか。
峰 まず、出産直前になってすごく体調が悪くなってしまったんですよね。私の友達には出産前日まで遊びに行ったりして超元気だった子もいるのに、私は本当にヨボヨボで。チャラヒゲから完全に介護されてる状態でしたね。足にブツブツができたり、妊娠線が突然できたりして。
それに、我慢すれば生まれないというわけじゃないので、4月2日を過ぎるまではずっと不安でした。出産後、チャラヒゲが出生届を見せてくれたんですけど、誕生日の欄に4月2日って書いてあるのを見て「うむうむ、もう私最高の誕生日プレゼントあげたわ」と思いましたね。
2020年4月に出産…新型コロナの影響は?
――峰さんが出産したタイミングって、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大が問題になり始めた頃で、出産もなかなか計画通りにはいかなかったんですよね。
峰 そうですね。ちょうど私が入院する日の朝の病院の会議で立ち会い出産が禁止になったって聞いたときはショックでした。今はもう少し緩和されて立ち会いもできるようになっているので、本当に一番悪いタイミングでの出産になっちゃったんですよ。
――パートナーであるチャラヒゲさんも立ち会いができなくて残念でしたね。
峰 いや、チャラヒゲは立ち会いたくなかったらしいです。血が怖いので。でも私は立ち会って欲しかったです。
出産後、ベッドに寝ながらストローで飲み物を飲むんですけど、自分で新しいストローに取り替えるのがすごく辛いんですよ。「ちょっと売店であれ買ってきて」と頼む相手もいない。看護師さんに頼むわけにもいかないし、すごく困りました。これもチャラヒゲが立ち会いしてくれていれば回避できたのになって。
――大変だったんですね。