ソフトバンクにドラフト2位で入団した高橋礼 ©高木遊

「夢が叶い感動した」「自然と涙がこぼれた」

 例えばそんな感傷的なコメントから遠い存在にいるのが、ソフトバンクの新人・高橋礼だ。ドラフト2位指名にも「早かったら2位で指名が来ると監督から聞いていたので、安心したって感じです」と当時の状況を冷静に話す。

 また「両親が一番喜んでくれました」としながらも、周囲の反響や変化については「そんなに変わらないです。昔からプロに行けると言われていたので、やっぱりなったんだという感じですね」と淡々とした口調は変わらない。

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 担当した荒金久雄スカウトは指名あいさつ、契約交渉、新人合同自主トレといった新人行事を見た上で、その佇まいに感心したという。

「優しそうに見えるけど、動じないところがあって、自分のペースや雰囲気を持っていますね。僕はこうやりたいという良い意味の頑固さも見えます。何年かプロ野球やってきたような雰囲気でした」

 筆者も専修大の下級生時から取材してきて、同じような印象を受けてきた。それを高橋本人にもぶつけてみると「そうですね」と少し笑った後、真剣な面持ちで「いろんな経験をさせてきてもらったので、いい意味で動揺しないのかもしれません」とつぶやいた。

大型変則右腕が巻き起こした旋風

 188センチの大型アンダースロー右腕として、専修大1年時から活躍を果たした。浮き上がり、時に140キロを超えるストレートには、全国屈指のレベルを誇る東都大学野球リーグの打者たちも対応できなかった。

 1年秋に2部リーグで5試合32回2/3を投げて、自責点はわずかに4。1年生ながら原樹理(東洋大/東京ヤクルト)、黒木優太(立正大/オリックス)、戸根千明(日本大/巨人)らを抑えてリーグトップとなる防御率1.10の成績を残し、チームを2部リーグ優勝に導いた。入れ替え戦でも2試合に先発登板して試合を作り、1部昇格に貢献した。

 翌春も勢いは止まらず、1部昇格即優勝の快挙を達成。高橋も守護神としてチームの躍進を支えた。また夏には侍ジャパン大学代表にも選出され、ユニバーシアードに出場。中継ぎとして相手の反撃を許さない投球を見せて金メダル獲得に貢献した。

 当時の高橋の躍進を語る上で欠かせないのが、専修大でバッテリーを組んでいた時本亮(現東芝)の存在だ。プライベートでも仲良く「すべての面でお世話になりました」と高橋は語る。マウンドでも「時本さんの構えたところに投げていれば試合は作れると思っていましたし、コントロールに苦しむこともありませんでした。僕はマウンドで頑張るだけでした」とストレスなく、その能力を遺憾なく発揮していた。