温かい白米に冷たいウインナーが刺さっていた
水谷 結構ひどかったんですか?
徳井 顔を合わせることはほぼなかったんですけど、妹に飯を作る役割だったのでドアの隙間からスッと出てくる1万円札を受け取って買い物に行ってました。当時は1日1本飲めるC.C.レモンがご褒美で。それ以外、味のするものはほとんど食べてなかったです。
母親は僕が小さい頃から料理が下手で、カレーさえまずかったからカップラーメンがご馳走で。だからカップラーメンを食べてた可能性が高いんじゃないかな。
水谷 温かい白米に冷たいウインナーが刺さっていたそうですね。
徳井 ありましたね。それは精神疾患ではなかった頃のものです。母親からすれば、温かい白米で冷たいウインナーが温まるだろうと思っていたんでしょうね。けど、ラッキーなほうでしたよ。貧乏だったからなのか母親が料理に興味がなかったからなのかはわからないですけど、よく米に水をかけて食べてたんで。麦茶がかかってる時は嬉しかったけど、それは僕が作ってたのかもしれないです。
「浮気してる」ってずっと叫んでいる母親
水谷 お母様は自死されたそうですが、お聞きしてもよければどんな風に育たれたんですか?
徳井 両親とも北海道の田舎で生まれて。父親は牧場の次男で、長男しか優遇されない時代だったので、どうでもいいって感じで育ったらしいです。で、父親と母親は小中の同級生だったのかな。
母親は高校に行ってなくて、父親が高校卒業するのを待って結婚して、一緒に千葉へ引っ越して20~21歳くらいで俺を産むんですけど、知らない土地で人付き合いもないし、友達もいないし、親戚もいない。話を聞いている限り、親父が生き甲斐だったんでしょうけど、家にあまり帰って来なくなって壊れちゃったんだと思います。
水谷 孤独な気持ちを抱えていたということでしょうか。
徳井 本の主人公の母親と一緒で、「浮気してる」ってずっと叫んでいて。僕が20歳くらいの時も電話がかかってきて言ってましたね。
水谷 本のタイトルでもある、私だけ年を取っているみたいだという気持ちは理解できますか?
徳井 なるほどなって感じです。