千鳥のノブに言われて衝撃を受けた言葉
徳井 途中、主人公が自分のことで泣くシーンあるじゃないですか。僕、未だに自分のことでは泣けないし、怒りの感情があまりないんです。感情的でないのが弱点で。
水谷 それは芸人としてですか?
徳井 はい。やっぱり感情的だったほうが面白いですから。大人になって芸人の先輩に優しくしてもらって、ちょっとずつ出せるようになりましたけどね。35歳くらいの頃、小籔(千豊)さんや千鳥のノブさんがお前はお前のままでいいと言ってくれて。
水谷 具体的に、どういうきっかけで言われたんですか?
徳井 ノブさんとご飯を食べている時、僕が当時やってた腐ってる芸人について語る企画について「あれ、面白いからやったほうがいい。お前が言いたいことを言えばいいんだよ」って言ってくれたのは、かなりの衝撃でした。それまで僕は世間が求めていることを当てにいってるだけだったんです。だから楽しくもないし、悲しくもないし、どうでもよくて。
「なんでもいいから好きなことをやってください」は苦手
水谷 どうでもいいのに、芸人として頑張られていたのが素晴らしいですけれどね。頼まれるとやり遂げてしまうと。
徳井 そうですね。だから、お笑いの「なんか面白いことやってください」っていうのは一番苦手です。例えば「経費1億円使い切ってください」なら考えられるんですけど、「なんでもいいから好きなことをやってください」と言われると何も思いつかなくて。
水谷 どういう気持ちですか?
徳井 「なんで俺に決めてほしいの?」って聞いちゃうかもしれない。何かしら理由が欲しいので、直感で動くのは苦手なんです。
●『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』では、自分のことでは泣けないという徳井さんが涙を流したできごとや、相方の吉村崇さんとのコンビが続いた奇跡の理由、ヤングケアラーの方が愛に触れるための場所はどこかについてなど、対談の全文をお読みいただけます。
text:Aki Takamoto
photographs:Atsushi Hashimoto
みずたにみどり/神奈川県生まれ。主な著書に『精神科ナースになったわけ』(イースト・プレス)、『こころのナース夜野さん』(小学館)。
とくいけんた/ 1980年生まれ、北海道出身。2000年、東京NSCの同期・吉村崇と「平成ノブシコブシ」を結成。著書に『敗北からの芸人論』(新潮社)。
【週刊文春WOMAN 目次】アーチャリーと呼ばれた少女は39歳になった/母、樹木希林とお経/令和の女性皇族はなぜ“生きづらそう”に見えるのか/「鎌倉殿の13人」ロスのあなたに
2023創刊4周年記念号
2022年12月22日 発売
定価660円(税込)