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「安く、早く」というのもわかるけど…子どもの散髪、1000円カットで済ませると失敗する理由

2022/12/30

落ち着きがない子を切るのは大変

 子供は頭が小さいので、カットの手数が減る側面もありますが、「子供を切ること」に慣れているかどうかにおいても、技術的な差が出やすいです。

 特に小学1~2年生ぐらいまでのお子さんを切る時には、予想しない動きに注意する必要があります。

 興味が散漫で、あっちこっちと向いてしまうことは当たり前。振り上げた腕で美容師さんの手元を邪魔してしまったり、ジャンプするように座り直したり。くすぐったくて動いてしまったり、切った毛が首について、「かゆいかゆい!」となってしまうことも多いです。

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 美容師のハサミの切れ味はとてもよく、手元が狂うと自分の手を深く切ってしまうこともあります。そんなハサミが誤って子供に触れてしまったら、大惨事です。

 また幼稚園ぐらいまでのお子さんだと、「髪を切るのは痛い」と怖がってしまう子も多いです。さらに、2~3歳の子たちは、慣れない場所に来た緊張も重なって、ご機嫌ななめになってしまうこともあります。飽きてしまって“帰りたいモード”になったり、逆に寝てしまって、頭がグラングランすることも。

 そのためお子様カットはあまり時間をかけず、ササッと終わらせてあげるのが鉄則です。

対する美容師は、時間に追われている

 美容師は予約時間に合わせた時間割や、立ち寄ったお客様の順番待ちの中で仕事をしています。よほど暇でなければ、一人一人にかけられる時間は決まっているのです。1000円カットの場合は、10分で仕上げることが前提のビジネスモデルです。圧倒的な安さは、数をこなすことでカバーされています。

 そのため、子供がぐずってしまったから時間を延長、とはいきません。1000円カットのように時間を十分に確保できない営業スタイルの美容室や床屋さんでは、ルーティンワークになりがちで、細部に目を配れないカットになってしまいます。

子供にだって「こうしたい」「これはイヤ」がある

 美容師として子供に接していると、子供の「なりたいヘアスタイル」が親御さんの意向と食い違う場面に立ち会うことがままあります。カットの頻度を減らそうと必要以上に短めを推す親御さんに対して、切り過ぎるのを明らかにイヤそうにしているお子さん。

 美容師としては自分が手を下すことになるので、ふてくされたり、泣きっ面になっているお子さんを見るのは、正直心苦しいです。