そして、子供の「なりたいヘアスタイル」を理解するのは難しいです。言葉が拙いのは仕方がないことですが、ニュアンスを掴むのに時間がかかることもあります。ですがちゃんと聞いてあげると、その子の「こうしたい」「これはイヤ」はちゃんと伝わります。
また、女の子はどの世代でも「お洒落になる」「可愛くなる」ことに素直に反応しますが、ある時期から男の子には「カッコつけるのは、カッコ悪い」といったムードが生まれるように思います。
カッコよくなって嬉しいことに素直になれないムードは、だいたい小3ぐらいから、中学卒業まで引きずります。やり過ぎると学校で“ナルシスト”の烙印を押されてしまう。世代が変わっても、やはり仲間内のそういった空気感はあるようです。
トラウマになる子もいる
いつも不本意なヘアスタイルになることから、髪を切ること自体がイヤになってしまう子供たちもいます。
実は、僕もそうでした。「伸びたから切ってきなさい」と母親に言われる小学生の僕は、近所の床屋さんで切ってもらっても思い通りにならないヘアスタイルがイヤでした。
既に一人で床屋に行くようになっていた小5の僕は、一度、「こうしたい」と母親には伝えず、床屋のおばちゃんに自分の口から細かくオーダーしたことがあります。するとおばちゃんは、母の確認を取るために自宅にTEL…。お年頃で恥ずかしい想いをしたことを、今でも覚えています。
また別の1000円カットの床屋さんに行ったときは、雑すぎて、毎回耳を軽く切られる恐怖を味わっていたし(僕だけでなく兄弟もみんな耳を切られていた)、短すぎるカットは「今の伸びた髪の方がカッコいいのに」と、既に美意識の芽生えていた僕にはある種トラウマのようになっていました。そんなこともあって、中学生になってからは自分で切っていました。
美容室でカッコよく、可愛くしてもらえる今の子供たちは、本当にうらやましいと思います。美容室や床屋が嫌いになってしまうのは可哀想。なので、僕は、なるべく親御さんよりお子さんの意見を尊重しています。お手頃に済ませたい親御さんの気持ちもわかりますが、子供のカットに時間をかけてくれ、子供の要望を丁寧にすくってくれる美容院を選んでみませんか?
お子さんをカットすることはなにより微笑ましく、癒されることです。美容師としては、笑顔で帰ってもらえれば本望です。