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――動画を拝見すると、多良さんの日常からは、老いたとしても、一人だとしても、自分の中で満足感をもって日々を重ねていくことができる――そんな力強さを感じます。老いた親を持つ子ども世代としても学びがある。『Earthおばあちゃんねる』に励まされる人も多いと思います。

多良 そういったコメントを多くいただいています。ありがたいですよね。亡くなった主人は、普通のサラリーマンでしたから、子育てをしながらでは贅沢はできません。節約しながら、できる範囲で、今までずっと工夫してきたものを、少しずつ年寄り向きに簡単にしてきただけ。

 そんな何気なくやっていることに好意的なコメントを寄せていただけると、「えっ、そうなんだ」と反対に気づかされます。普通の生活でいいんだ――と、視聴者の方に教えてもらった感じです。このままで何も変えなくていいんだと思って、今は毎日楽しんでおります(笑)。

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窓辺に飾られた草花 ©文藝春秋

「主人から家を建てようかと言われたときも…」

――その悠々自適さがうらやましい……と言ったら変な言い方ですけど、すごいです。

多良 1日の時間を自分の自由に使えるのは、何物にも代えられない喜びです。さみしいとはまったく思いません。

――なるほど……。将来一人になるんじゃないかという不安を抱えている人も少なくないと思います。

多良 主人は9つ年上でしたから、主人が先に亡くなるというのは、ずっと覚悟してきました。いずれは私一人になるんだなという思いもあって、年金も自分の分は使わないでコツコツ貯めました。主人から家を建てようかと言われたときも、「この団地で十分」と断りました。子どもたちに絶対に迷惑をかけないように、お金は貯めるという気持ちはずっとありましたね。