日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関から、官僚の人事情報をいち早くお届けする名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年2月号より一部を公開します。

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また財務省”司令塔”の悪癖が……

 防衛力強化をめぐる財源問題は増税の方針が決まったものの、決着は先送りとなった。まなじりを決して臨んだ財務省にとっては微妙な結果だった。

 茶谷栄治事務次官(昭和61年、旧大蔵省入省)以下の幹部は、メディア各社を訪問。「付加税」方式での増税実現への理解を求め、ブリーフィング行脚を繰り返した。

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 平時なら住澤整主税局長(63年)ら主税局が中心となって動くはずだが、防衛増税ほどの目玉政策では本流の主計局が出張ってくる。防衛費は40兆円を超える巨額の歳出計画となるため、新川浩嗣主計局長(62年)も自ら主戦場に姿を見せた。

木原誠二氏 ©時事通信社

 血気盛んな財務省だったが、急所は首相官邸にあった。

 かつてなら霞が関のトップ、官房副長官が財務省を強力に支援したものだが、岸田文雄政権の栗生俊一官房副長官(56年、警察庁)は経済政策、政治的に厄介な問題には我関せず。官房長官の松野博一氏は反財務省の色濃い安倍派出身で、官房副長官の木原誠二氏(平成5年、旧大蔵省)は、党対策においては無力だった。

 唯一、宇波弘貴首相秘書官(平成元年)が財務省の意向を代弁するが、本省との連係も万全ではなく、次第に財務省は窮地に追い込まれる。

 最終防衛ラインを「赤字国債の発行」に定めた財務省は、法人税、復興所得税からの転用、さらに特別会計の剰余金まで、なりふり構わず財源をかき集めて、なんとか乗り切った。

 前線で司令塔役となったのは寺岡光博主計局次長(3年)だ。だが、菅義偉首相秘書官時代から指摘された「物事を抱え込みすぎる」悪癖が出て、混乱に拍車をかけた。財源問題は2023年に持ち越しとなった。