「どういう神経?」防衛省の支離滅裂ぶり
一応の決着をみたものの、永田町、霞が関では防衛費の財源問題は燻り続けている。党三役・閣僚ながら増税反対の論陣を張った萩生田光一政調会長や高市早苗経済安保相の言動からは、政界での主導権争いの匂いも漂う。
今回、党内で評価を下げたのは陸自OBの佐藤正久参院議員だろう。新たな装備計画の検討に深く関与しながら、党会合では「国民への説明が足りない」などと政権批判をぶった。これには同僚議員も「国防族として自身にも説明責任があるのに、どういう神経をしているのか」とあきれ顔を浮かべる。
支離滅裂な対応ぶりは、佐藤氏の古巣である防衛省にも当てはまる。前次官の島田和久内閣官房参与(昭和60年、旧防衛庁)が昨年初めから安倍晋三元首相らに説いた防衛費の「GDP比2%」への増額は、具体的な内容も財源も白紙だった。
鈴木敦夫次官(同)ら現幹部は、島田氏の尻拭いに必死で、「防衛省は現場が上げてきた要求リストをほぼそのまま装備計画に盛り込んだ」(官邸スタッフ)という。
ミサイル防衛計画の不十分さを訴えて敵基地攻撃能力保有に道を開いたにもかかわらず、装備計画で約1兆円のイージスシステム搭載艦配備に固執することからも、防衛省の迷走ぶりは見て取れる。
かつて傍流省庁の立場に甘んじた防衛省も、現実的な構想力と国内政治での調整力が求められる時代になっている。
他省庁や制服自衛官から今も、傑出した存在として名前があがるのは黒江哲郎元次官(56年)。今回は、増田和夫防衛政策局長(63年)の調整が事態収拾に一役買ったといわれる。下の世代では加野幸司NSS審議官(平成元年)、大和太郎統幕総括官(2年)あたりは「他省と丁々発止の議論ができそうな人材」(同省中堅)と見る向きもあり、今後の省人事での注目株となりそうだ。
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「霞が関コンフィデンシャル」の全文は、「文藝春秋」2023年2月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
“防衛増税”で窮地の財務省、迷走する防衛省、半導体復活に蠢く霞が関