札幌に次ぐ北海道第2の都市、旭川市。人口約34万人の同市で、1年半もの間、助産所でのお産が出来ない状態が続いている。
助産師が分娩や産後ケアをする助産所。病院や診療所と違って医療行為ができないため、麻酔や陣痛促進剤の使用や帝王切開などはせず、自然の生理現象に従って陣痛を待って行う経膣分娩だけを扱う。一般的にこのお産は「自然分娩」と呼ばれる。
「現代のお産は大半が病院や診療所で行われ、厚生労働省の統計によると、2021年の出生数が約81万人なのに対し、助産所で出産した数は全国で4277人。割合では全体の1%に満たないが、過剰な医療行為に対する忌避や産後の満足度の高さなどから、助産所でのお産を望む妊婦はいまも一定数います」(医療ジャーナリスト)
その助産所は緊急時などに備えて、嘱託医と嘱託医療機関を定めておくことが医療法で義務付けられている。しかし――。旭川市で助産所を営む北田恵美さんが語る。
「どこも嘱託医療機関を引き受けてくれない」
「長年にわたり旭川市内3カ所の助産所の嘱託医を務めてきたA医師が、21年7月に体調を崩して10月に亡くなりました。旭川市ではこの3カ所で年間30~40件の出産を扱っていましたが、それ以来、旭川市では嘱託医と嘱託医療機関が不在の状態が続いているんです」
法で義務付けられた嘱託医がいなければ助産所はお産を扱えない。市内の妊婦らから「まだ再開できないんですか」と数多くの問い合わせを受ける中、助産師らは後任の嘱託医を探して奔走したが、ある問題に直面した。
「市内には、嘱託医療機関になれる設備や実務能力のある病院が3カ所あります。旭川医科大学病院、市立旭川病院、JA北海道厚生連旭川厚生病院です。でも、どこも嘱託医療機関を引き受けてくれないのです」(同前)