文春オンライン
助産師たちが異例の民事調停 旭川市の助産所で1年半出産ができない理由

助産師たちが異例の民事調停 旭川市の助産所で1年半出産ができない理由

加藤教授は助産所の存在を“完全否定”

 Bさんは言う。

「なんで助産所の嘱託医を探すのに、まず医大に挨拶に行かなければいけないのか、当時は意味が分からなかった。普通の感覚で『まずは行政に』と思って保健所や市にお願いに歩いていたんですが……。でもそれで察したんです。この地域の産婦人科は旭川医大が仕切っていて、ほかの先生にいくらお願いしても意味がないんだと」

 助産師たちはその後、弁護士を立てて、旭川医大との交渉を行った。理解を示した西川祐司学長と、医大病院の古川博之病院長は22年11月、加藤教授を説得するための面談を実施。だがそれに対して、加藤教授は信じられない言葉で反論したという。

ADVERTISEMENT

「我々は、助産所での分娩に反対している」

「正常な分娩というのはないんですよ」

 まるで助産所の存在自体を完全否定するような考えを、複数回述べたというのだ。

今年が創立50年目となる旭川医科大学

 1年半も助産所の嘱託医療機関が決まらない異常事態。旭川医大に加藤教授の発言や行動について事実確認をすると、こう回答した。

「基本的には、業務量等、個々の負担を勘案した上で、産婦人科医の意向を尊重すべきであり、また、当事者間の信頼関係に基づいて検討すべきことと考えております」

清泉女学院大学大学院看護学研究科・助産学専攻科の市川きみえ准教授は、旭川で助産所でのお産がストップしている状況に、大きな懸念を抱く。