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ロッテ首脳陣が泊まり込みで行った「コーチ育成講座」とは

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/02/01
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 選手たちが自主トレに励んでいる1月中旬。千葉市内のホテルに井口資仁監督以下、一、二軍の首脳陣全員が集まった。ホテルに缶詰め状態で2日間にわたって行われたのは「コーチ育成講座」。新人選手に向けた講義はこれまでも行っていたが、コーチを対象にした講座は初の試みとなった。1日目が9時30分開始で18時30分まで。翌日は9時から18時まで。620社のコンサルティング実績を持つ組織戦略コンサルタントを講師に招いての泊まり込みの合宿である。

 講座が始まる前にマイクを持った山室晋也球団社長は今回の目的を次のように語った。

「一気通貫の組織を目指しての活動。考え方、目線を合わせることでどういう風に選手を育成するのか、同じ方向へと全員が向かっていけるように考えることが大事だと思っています。これは一度で終わらせるのではなく年に数回、そして毎年行う事で強固で一貫性のある組織を作りたいと思っています」

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「コーチ育成講座」に参加した井口資仁監督 ©梶原紀章

井口監督が現役時代から感じていた言葉の重要性

 マリーンズの選手育成方針に関する共通認識の確立。そしてコーチに求めるコミュニケーションの基礎知識を伝える作業となった。初の試みは成功に終わったようだ。コーチそれぞれが指導、選手の育成に関して考え方を持っていても、それを口にして他のコーチに伝える作業は新鮮だった。そして講師が発する言葉は自分の中で分かっていることが多くあっても改めて聞き、それをメモすることで頭を整理する貴重な時となった。

 元々、コミュニケーション重視のチーム作りを掲げていた井口監督も充実した表情でホテルを後にした。それは自分の考えと、講座で聞いた話が一致していたことにより確信を得たから。そして自身を支えることになるコーチ陣が選手指導に対して熱い想いと持論を持っていることを再確認できたことも大きかった。

「コミュニケーションの大事さを改めて感じたね。言葉の力は大きい。伝える力って野球の技術論の前に必要だと思う。選手がやる気をなくすのか、モチベーションが上がるのかは伝え方ひとつで、同じ言葉を使っても場面や相手によって受け取り方は違う。そういうところは自分でも勉強していきたいと改めて思った」

 井口資仁監督は昨年、現役を引退。ここ数年はプレーヤーとしてグラウンドに立ち続けながらも、達観した目線でコーチと若い選手たちを見ることも心がけていた。すると今まで見落としていた色々な事に気が付いた。モチベーションが上がっていた選手がコーチのちょっとした一言によって一瞬で気持ちを落としてしまうことがあった。たわいもない一言だったが、ある側面からじっくりと考えると、それは確かに気持ちよくプレーをすることを妨げた一言。それは日常生活でもよくある。自分では傷つけるつもりはなくても、ちょっとした一言が相手を不快にすることがある。それはどんな事か。いろいろと考え、自分なりに考えをまとめる時間を作った。

「そういうこともあって、ここ何年間かは、若い選手に伝えるときに僕も言葉を大事にしてきた。そして監督になった今、言葉はこれからもっと大事になってくるところ。僕がコーチに伝えるのも、コーチが選手に伝えるのもそうだと思う」

 何どもうなずくように講座を聞いていた井口監督は終了後も自然とコーチ陣と今後の方針や練習方法について話し合っていた。指揮官が43歳。そしてコーチ陣も40歳代が多い若い組閣。若いがゆえの12球団屈指のコミュニケーション力でチーム力向上を狙う。

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