昨年2月1日に石原慎太郎氏が亡くなり、あとを追うようにして妻・典子さんも3月8日に亡くなった。

 実は生前の2人には、夫婦で句集を出す計画があった。慎太郎さんは全21句、典子さんは約1500句の中から563句を厳選し、一周忌が営まれる3月初旬に完成予定の『青葉風』に掲載される。

 今回、「文藝春秋」3月号では、その中から珠玉の40句を一挙掲載し、四男の延啓さんが俳句の背景や当時の思い出について解説している。

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父は自分の妻が熱心に俳句に取り組むことには好意的だった

〈母に会うたびに「今日はとても良い句ができた」「句会で特選をもらい褒めてもらった」と少女のように嬉しそうに話していたのを覚えています。時には句会の俳句旅行に参加することもありました。一方、父の方は俳句については「難しい」と言っていた記憶があります。(中略)

 父から母の俳句の感想を聞いたことはありませんでしたが、母が新しい俳句を詠むと添削をしたり相談に乗っていたようです。作家である自分の妻が熱心に俳句に取り組むことには好意的であったと思います〉

慎太郎氏と典子夫人 延啓さん提供

些細なことに喜びを感じ、句を詠む母

 典子さんが俳句を始めたのは1990年頃から。とりわけ印象に残るのは、夫・慎太郎氏のことを詠んだ句だ。

 お雑煮のこくがあるなと夫の言う    典子

 年初より雑煮の味を褒られし      典子