――過去にもロバと徒歩旅行をした人って、いるんですか?
太郎丸 私は少なくともロバと旅した日本人を二人知っています。一人は、ボリビアからアルゼンチンの南端まで歩いて『ロバと歩いた南米・アンデス紀行』という本を書いておられる中山茂大さん。
もう一人は、モロッコをロバと旅をした春間豪太郎さん(著書に『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』がある)。この人は、動物と旅をするのが好きな人で、ロバだけでなくラクダや馬とも旅をしています。
――では、誰もしたことのない奇想天外なことでもないんですね。
太朗丸 そうですね。
モロッコで買ったロバの名は…
こうして遊牧民との生活を通してロバのことを学んだ太郎丸さんは、一旦帰国後、身支度を整えてロバと旅をするために再度モロッコに向かう。それが2018年の10月のことだった。
太郎丸 最初はミデルトという高原の町に行って、ホテルの従業員に「ロバを売ってくれる人、知らない?」って聞いてみました。モロッコの人って、暇そうな人に聞いたら、けっこう連れて行ってくれるんですよ。
――優しいんですね。
太郎丸 彼らは人のつながりが濃いので、親切にいろんな人に聞いてくれます。そして、ロバを持っている人に行き当たって、無事、ロバを手に入れることができました。
――モロッコのロバは、どの程度のお金で買えるものですか?
太郎丸 モロッコのロバは安くって、だいたい1万円あれば手に入ります。いいロバを手にしようとしたらあと5000円くらい上乗せする。
――このとき旅をしたロバの名前は何ですか?
太郎丸 このときのロバには名前は付けていないですよ。
――あ、そうなんですか。それはなぜですか?
太郎丸 基本的に、自分の中でロバに名前を付ける必要性は感じていないんですよ。自分とその1頭しかいないので、名前を呼ぶ機会もないですし。このときは、Twitterもやっていなかったので名前を付けていなかったんです。ただ、2022年の旅ではTwitterをやるようになって、そうすると「ロバの名前はなんですか?」って聞かれるんですよ。
――ふふふ(笑)。
太郎丸 最初は「ロバに名前は付けていません」って答えていたんですが、その後も「ロバの名前はなんですか?」って聞かれ続けたので、フォロワーの人たちのために便宜上、名前を付けたんです。
最初に名前をつけたのはトルコを旅したロバなんですが「ソロツベ」と名付けました。「そろそろ名前をつけるべきか」というフレーズの略称として「ソロツベ」としたんですが、毎日「ソロツベ」って呼んでたら「まさにこいつはソロツベだな」って思うようになり。フォロワーの人も「ソロツベ、ソロツベ」って呼んでくれて、いい名前だったなと思っています。
――モロッコの遊牧民の人はロバに名前は?
太郎丸 付けないです。日本でも家畜には名前を付けていないでしょうから、その感覚ですね。