イラン、トルコ、モロッコをロバと旅をした太郎丸さん。帰国した現在は、その体験をまとめた本を執筆中だという。そしてその本ができた後、次は日本国内をロバで旅する計画があるそうだ。

ロバと旅する太郎丸さん ©杉山秀樹/文藝春秋

ロバはなぜ日本にいない?

――そういえば、これだけ荷物も運べるロバは、なぜ日本にあまりいないのでしょうか。

太郎丸 日本には在来種のロバはいないし、農耕用には馬も牛も使われてきたので、ロバが使われなかったんでしょうね。あとロバの鳴き声がうるさいというのも、ロバが根付かなかった理由のひとつかなって思います。

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――「わーんわーん」って鳴くんですか?

太郎丸 個体によって微妙にちがいますけど、大音量で甲高く管楽器が壊れたような音ですね。

――どんなときに鳴くんですか?

太郎丸 お腹が空いたとき、メスを見たとき、犬に吠えられてビックリしたとき、喉が乾いて水が飲みたいときなどいろいろありますね。基本的にうるさいので、鳴いてほしくはないですね。とくに犬に吠えられて鳴くときは、このやろうって思います。ロバが鳴くと、犬が煽られたように感じるのか、余計に吠えるんですよ。

――夜は鳴かない?

太郎丸 スーコは鳴きませんでしたが、ソロツベはしょっちゅう鳴いていました。2匹とも鼻を鳴らしたり歩き回るので、テントの近くに繋げると、その音が気になってよく目が覚めます。

キャンプ場で草を食べるスーコ(太郎丸さん提供)

日本全国、津々浦々、田舎道をロバと歩きたい

――ちなみに、日本の公道をロバで歩くことについて問題はないんですか?

太郎丸 警察には話しておこうと思っていますが、道交法には馬は軽車両扱いで通行できると書かれているので道路を歩くことはできます。また、過去に道産子という馬と一緒に、北海道から沖縄まで旅をした人がいるんですよ。

――え? そうなんですか。

太郎丸 元北大生で、今は千葉県で獣医師やっている山川晃平さんです。山川さんは、北大の獣医学生だったとき、日本の在来馬が減っていることを知ってもらおうと2頭の道産子と旅をしているんですよ。

――なるほど。馬が大丈夫なら、ロバも大丈夫ですね。

太郎丸 はい。最近、その山川さんと知り合えてアドバイスをもらっています。

――動物旅の先輩として(笑)。

太郎丸 そういう事例があるので、あまり心配していないです。

――ルート的なことはまだ考えていないんですか?

太郎丸 明確なルートはまだ頭の中にはないんですが、歩くなら田舎道がいい。それも全然車がいないような、小さな集落と集落をつなぐような道を全国津々浦々歩こうと思っています。また日本のロバの飼育状況が未知数なので、全国でロバを飼っている人たちを訪ねて行けたらなって思います。

――ロバの交流をしながら(笑)。ちなみにロバをいちばん飼っている都道府県はどこですか?

太郎丸 どこなんですかね(笑)。たぶん北海道じゃないかな。広島県の尾道には、ロバが5頭くらいいる「尾道ロバ牧場」っていうところがありますが。