ロバと一緒に、イランやトルコ、モロッコといった土地を旅している「太郎丸」さんこと高田晃太郎さんのインタビュー。本稿では、太郎丸さんにとって2度目のとロバの旅となった、2022年のイラン→トルコ→モロッコの旅の話から聞いていきたい。

ロバと旅する太郎丸さん ©杉山秀樹/文藝春秋

3カ国を全部で5頭のロバと

――2018年の旅が1頭目のロバ。それで2頭目からが2022年2月からのイラン、トルコ、モロッコの旅になるんですね。

太郎丸 そうです。2018年のモロッコが1頭。イランがロバ2頭、トルコは「ソロツベ」というロバ1頭、モロッコでも「スーコ」というロバ1頭。だからこれまで一緒に旅をしたロバは全部で5頭です。

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――2022年は、ロバと旅をしようとこの3カ国を選んだわけですか。

太郎丸 はい。ロバと旅をするうえでいちばん大事なのは、治安がいいことと、ロバがいること。イランは、一般的には核開発とかアメリカから悪の枢軸国とか言われているので、あまり治安がいいというイメージがないと思います。ただバックパッカーの人たちからは「イランの治安はすごくいい」とか「ものすごく親切だった」って聞くので、旅をする人の間ではイランは評判の良い国なんです。

――トルコも?

太郎丸 トルコは観光立国なので治安の心配もないし、ロバもいるだろうと。

イランの風景(太郎丸さん提供)

――どの国でもロバはたくさんいましたか?

太郎丸 モロッコではどこにでもロバがいて、今も現役で働いています。一方、イランとトルコでは、30~40年前ならどの農家もロバを飼っていたと聞きますが、今ではほとんど見なかったです。

――ちなみに世界でいちばんロバの頭数が多いのはどこですか?

太郎丸 エチオピアらしいです。

――アニメ『母をたずねて三千里』でもロバを使って旅をしていました。

太郎丸 あれはアルゼンチンですね。南米にはロバはいるはずです。ただ、私が旅したときはあまり見なかった。というか意識してなかったですね。ロバってただ草を食べているだけなので、あまり存在感がない。意識しないと目に入らないんですよ。

突然、尻を蹴られたり暴言を吐かれたり…

 旅では、想定していない状況にたくさん遭遇するものだ。太郎丸さんも、イラン、トルコ、モロッコと旅するなかで、辛い経験もしたという。

太郎丸 イランに行って初めて知ったのですが、この国ではアフガニスタン人(難民)への偏見と差別が蔓延していて、私も日常的に嫌がらせを受けることになりました。というのも、アフガニスタンの少数民族のハザーラ人は日本人の顔とよく似ているらしく、私が田舎をロバと歩いていると、地元の人からアフガニスタン人だと間違われるんです。それで、突然、尻を蹴られたり暴言を吐かれたりすることがあり、辛かったです。

――それは行ってみないとわからない現実ですね。トルコはどうですか?