太郎丸 飼い主が近くにいたら、いきなりは逃げないです。ただ、飼い主として認められていない段階だと、ちょっと離れると逃げる場合があります。トルコでは2回逃げられました。
カッパドキアの広大な畑で逃げられ…
――それはどんな状況のときに?
太郎丸 1回は草を食わせていたとき。ロバって走ったらめちゃくちゃ早いので絶対に追いつけない。あと、ロバは狡猾なところがあって、こっちのスピードに合わせるんですよ。こっちが小走りだと、あっちも小走りで。止まったら、止まって草を食べて。全力で走ったら走る。だるまさんがころんだみたいな。
――ふふふ(笑)。
太郎丸 ただ街中だったので、街の人が協力してくれて挟み撃ちにして捕まえました。
――もう1回は?
太郎丸 もう1回は、カッパドキアの広大な畑で逃げられ完全に見失って、これはダメだと諦めたんです。そのとき、たまたま通りかかった老夫婦に「ロバに逃げられた。助けて」って言ったら、車に乗せてくれて。500メートルくらい走ったら、ちょうどロバが草を食べてたんですよ。それで車を先に行ってもらって、自分と挟み撃ちをして確保しました。
ロバがいると、どこにでも行ける
――挟み撃ちがポイントなんですね。
太郎丸 はい。ロバに逃げられると絶望しますよ。一緒に歩いていると愛着も湧きます。ただこっちは愛着を持っているのに逃げられたというショック。あと荷物持ちのロバがいなくなれば旅が続けられなくなるというショックもあります。
――ロバがいないと旅が続けられないというのは、ロバの能力からくることですか。たとえばロバはどれくらいの荷物を持てるのでしょうか?
太郎丸 ロバは、体重の20%までは安全に運べると言われています。
――100kgだったら20kgまで。
太郎丸 そうですね。私のロバは体が大きかったので、250kg前後はあったはず。単純に計算すると40~50kgは安全に運べます。私の旅は1日に20~30kmという長距離を歩くので、その半分の25kgくらいを目安にしていました。
――自分は、何も荷物を持たなくても大丈夫?
太郎丸 自分のテントとかは、バックパックに入れて自分で背負って歩きます。ロバには、自分の食糧とロバの食糧、餌を与えるタライとか釘とか、あと鞍自体が5kgくらいあるので、軽い時は15kg。どんなに重くても30kgくらいですね。
――人間が背負うには大変な重さだから、ロバがいないとできない旅がある?
太郎丸 ロバがいないとできないというより、ロバがいると、よりいろんなところに行けるってことですかね。店がないような無人地帯でも、食糧を何日分でも積めるので、どこにでも行けるんです。
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