太郎丸 トルコはすごく良かったですよ。しょっちゅうチャイ(お茶)に誘われますし、テントで寝るときは近くの民家に声をかけるんですけど、泊まらせてくれたり、テントに料理を持ってきてくれたり、お金をくれる人もいました。
あとロバをつないでいると、ロバの食べ物を持ってきてくれたりしてロバにも優しいんですよ。動物好きな人が多くって、ロバと一緒に写真を撮ろうとする人もいました。
――それだけ親切なのは、イスラム教と関係があるんでしょうか。
太郎丸 お金をくれるのは「貧しいものに施す」というイスラム教の考えですね。ロバと旅していると、貧しそうに見えるんでしょうね(笑)。旅人に優しくしなさいという教えもありますから。
どこでもロバが現役で働く、ロバの国・モロッコ
――モロッコはどうですか。
太郎丸 モロッコはこれまで5回旅をしていて、いちばん思い入れのある国です。モロッコはどこでも現役でロバが働いて、ロバとともにある生活が残っているロバの国ですね。
――観光におすすめですか?
太郎丸 歴史のある迷宮都市もあるし、山脈や砂漠といった自然、そして大西洋の港町もあります。いろんな魅力があって、万人受けする観光国だと思います。
追い剥ぎに襲われても我れ関せず
――旅を通して危険な目にも遭いましたか?
太郎丸 イランでは追い剥ぎに遭い、トルコでは酔っ払いに襲われました。私とロバは人通りのない道を歩いています。人通りのないところは、人がいなければ安心なんですが、車が1台通るだけで緊張するんです。こんなところで襲われたらひとたまりもないので、いつもビクビクしながら歩いています。
イランの追い剥ぎは、最初「何を持っているんだ」と荷物を探るようなことをして、その後、ふたたびやってきて襲われました。1回目のときに荷物を狙っているってわかるんですが、周りに助けを求める家もないのでどうしようもない。ロバもいるので逃げることもできないんです。それが徒歩旅行の辛いところです。
――そのとき荷物はどうなったんですか?
太郎丸 このときは、偶然通りかかった車に乗せてもらって追い剥ぎを追いかけて、運良くパスポートなどの荷物を取り返すことができました。
――それは不幸中の幸いでしたね。ちなみにそのときロバは?
太郎丸 ロバは追い剥ぎに襲われても、追い剥ぎを追い返してくれません。このとき、ロバが何をしてたかって言えば、自分には関係ありませんよといった感じで道端の草を食べていました(笑)。