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イランでは追い剥ぎに襲われ…それでも太郎丸さん(33)が「ロバと歩く旅」を続ける理由

ロバと旅する太郎丸さんインタビュー #2

2023/03/05
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イランで1頭、死なせてしまった…

 こうやっていろんな話を聞いて思うのが、自分はロバのことを何も知らないということだった。ロバという存在は知っていても、その生態や能力など、ほとんど知らない日本人が多いのではないだろうか。

――何歳くらいのロバを買うのがいいんですか?

太郎丸 今なら4、5歳がベストってわかります。10歳くらいでも十分に働けるんですが、ロバは急激な環境の変化が苦手で、旅に連れて行ったりすると、強いストレスを感じてしまうんですよ。それを知らなかったとき、イランでロバを1頭死なせてしまったことがありました。4、5歳なら、適応力があるので、旅に連れて行くにはそれくらいがいいですね。

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イランを旅したロバ(太郎丸さん提供)

――ロバの寿命はどれくらいですか?

太郎丸 30年くらいです。

――そんなに長いんですか。

太郎丸 ペットとして飼うなら30年で、労働力としてのロバなら20年ですね。

――雄と雌はどちらがいいんですか?

太郎丸 今なら、正直、どちらでもいいです。ただ若い雄の場合は、かなり性欲が強く、春の発情期には、雌を見るたびに突進していくので少し扱いづらい。雌の方が落ち着いていますね。

――好みの色や模様などありますか。

太郎丸 私の理想は、茶色の毛で、目と鼻の周りとお腹が白いロバです。

――それがかわいい?

太郎丸 それがロバらしいロバだなって思います。

世界中で「バカ」扱いのロバだけど…

――太郎丸さんのTwitterで初めて知ったロバのことは多いんですが、ロバの背中には「十字架」の模様があるから、キリスト教の国では、ロバは特別な見方をされるんですね。

太郎丸 あれは灰色のロバにある模様ですね。

ロバの背中には十字架の模様がある(太郎丸さん提供)

――あとロバってノロマの象徴のようにも言われますよね。

太郎丸 とくに西洋では言われますよね。馬は貴族の乗り物で、ロバは貧民の乗り物。それで、ロバといえば、バカとかノロマのキャラクターになりますし、イランでもトルコでもロバはそのままバカという意味になる。世界中でそういう扱いをされていますね。

 ただ、ロバって人間の暮らしに多大な貢献をしてきた歴史がありますし、ロバがいるだけで、人間ができることって増えるんですよ。重い荷物を遠くに運べたり、畑を耕す作業も楽になる。またロバのミルクはビタミンが豊富で、ヨーロッパでは高く取引されていて人間の暮らしにとても役立つんです。人間とロバの距離が近かったから、バカにされるのかな。たしかにボーッとしているので。

――ロバと馬を掛け合わせたものが「ラバ」ですよね。見た目もだいぶちがいますか?

太郎丸 だいぶちがいますね。ラバのほうが体もデカくて、積載能力も大きいです。ただラバはロバの値段の10倍はしますし、体が大きいので扱いにくいんです。

――ロバは、手綱を離すと逃げ出しちゃいますか?