俳優・コメディアンの大村崑氏、一宮西病院整形外科部長の巽一郎氏による対談「『100年筋肉』を鍛えよう」の一部を転載します。(月刊「文藝春秋」2023年3月号「総力特集 不老長寿への挑戦」より)
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「100年筋肉」を鍛えよう
巽 崑さん、筋トレでスクワットが一番得意だそうですね。見せてもらってもいいですか。
大村 いいですよ。先生も一緒にやりましょか。1、2……。
巽 背筋が伸びたきれいなフォームですね。息も全然上がらない。膝に痛みはないですか?
大村 おかげさんでありません。膝痛を治す先生に何ですが(笑)。
巽 僕を呼んでもらった意味があまりないかもしれないな(笑)。脈を取らせてもらっていいですか? 失礼します。ああ、太いな。
大村 何が太いの?
巽 血流の拡張の大きさと勢いがあるんです。漢方の表現でいうと気血、つまり人間の体を動かす目に見えないエネルギーと血が充実した太い脈をされていて、不整脈もない。これなら108歳まで生きます。
大村 専門家にそう言うてもらったら心強い。僕は今91歳。102歳まで生きようかなと思っていたんですけど、目標を変更しないと。
筋トレは86歳でも間に合う
大村崑さんは1931年、兵庫県生まれ。テレビ黎明期から「頓馬天狗」などのコメディ番組やCMで一世を風靡。近年はライザップのCMに出演し、86歳で始めた筋トレについて書いたエッセイ『崑ちゃん90歳 今が一番、健康です!』(青春出版社)が話題になっている。
巽一郎さんは1960年、大阪府生まれ。整形外科医で膝関節手術の第一人者ながら、食事制限や筋トレを指導する「保存療法」で3000人以上の膝痛を治してきた。2019年に出版した『100年足腰』(サンマーク出版)は10万部を突破。スーパードクターと謳われる。
巽 崑さんの本にあるビフォー・アフター写真はびっくりしますね。筋トレを始めた86歳の頃と、90歳とでは別人のようです。
大村 86歳の頃は腹囲が92センチありました。そこから週2回ジムに通うようになって、今朝測ったら77センチでした。
巽 腹筋がなくなるのが一番まずいんです。以前のお腹は腹筋よりも脂肪が多い。筋肉は使わないと脂に変わり、たるんでいきます。日本人のほとんどは腹筋を意識して鍛えていないからたるんでいますね。
大村 僕も5年前は日本人のお腹の典型だったということやね。
巽 お腹がたるんでくると、腰椎が前後にグラグラします。腹筋の押さえがないから。腹と腰の間にある背骨の中には、脳から脊髄神経が通っている脊柱管というものがあります。この管が、ズレ出てきた腰椎によって圧迫されるんです。脊柱管狭窄症って知っていますか? 症状としては足がしびれたり、膝がカクッと崩れたりするんですけど。
大村 聞いたことあるな。
巽 その原因で多いのが、たるんだお腹です。では腹筋をどう鍛えればいいか。一般にイメージするような、仰向けになって上半身を起こす動きはあまりおすすめできません。
大村 ジムでもやらないですね。
巽 高齢の方も取り入れやすい体操を一緒にやってもらってもいいですか。主な手順は次のとおりです。