ストリーミングの総再生回数が1億回を突破した「恋だろ」が大ヒットした5人組ロックポップバンド・wacci(ワッチ)。メジャーデビュー10年という節目でブレイクを果たした彼らだが、実はストリーミングの総再生回数が1億回を超える曲がもう1つある。2018年にリリースされた「別の人の彼女になったよ」だ。ボーカルの橋口洋平(39)が“女性目線”で詞を書いたこの曲は、「恋だろ」でブレイクする前のwacciの代表曲である。

 橋口自身はこの曲について、セルフライナーノーツで〈しっかり者の今の彼氏と、ダメだけど明るく、憎めない元彼。そしてその間で揺れる自分〉を描いたと明かしているが、一方でこうも綴っている。

〈さまざまな聞かれ方をされて広がっていった〉〈好きと嫌いを色んなところで生み出しながら、僕ら史上類を見ないペースでこの歌は届いていった〉

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 バンドの公式YouTubeにアップされたMVの再生回数は6850万回。SNSを中心に「ベツカノ」現象を巻き起こしたwacciの“もう1つの代表曲”はいかにして生まれたのか(全3回の2回目/#3へ続く)。

5人組のバンド・wacci(ワッチ)のほとんどの曲の作詞・作曲を手がけるのは、ギターボーカルの橋口洋平 撮影:榎本麻美

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代表曲「ベツカノ」は“女友達の恋バナ”から生まれた

——「恋だろ」のヒット以前に「別の人の彼女になったよ」ですでにwacciの名前は知られていました。

橋口 wacciについては、「ベツカノ」で知ってはいて、「恋だろ」でライブに行くようになった、という人が結構いますね。

「別の人の彼女になったよ」CDジャケットより

——男性ボーカルである橋口さんが“女性目線”で書いた曲として注目されました。女性の視点で歌詞を書こうと思ったきっかけは?

橋口 自分の周りに「ベツカノ」の主人公みたいな女友達が大量発生した時期があったんですよね。「今の彼氏には何の不満もないんだけど、あいつ(元彼)といた時のワタシも嫌いじゃないけどね……」みたいなことを言う人が(笑)。

 20代から30代にかけての時期って色々あるじゃないですか。そして恋愛のタイプもさまざま。「7年付き合った人と別れて、次の人と半年で結婚した」みたいな人。ダメな男だけど忘れられない恋愛から脱却して将来を考えた選択をした人。みんな仲間と飲みにいって、そういう自分の恋愛をあーだこーだ言っている。僕はそういう場に結構いて、「あ、これ歌になるな」って思って書いたのが「ベツカノ」なんです。〈しっかり者の今の彼氏と、ダメだけど明るく、憎めない元彼。そしてその間で揺れる自分〉——これって結構“あるある”だと思うんですけど、この曲が出るまで世間では言語化されていなかった気がするんですよ。でも「ベツカノ」によって定義できた。「あ、これベツカノじゃん!」みたいな。これは歌詞の書き手としては嬉しいですよね。

——女友達の会話から名曲が生まれるとは!