中堅ローコストハウスメーカー「アイ工務店」に勤務していた社員が、顧客データなどの機密情報を持ち出した上で、競合他社の「秀光ビルド」に転職していたことが「週刊文春」の取材でわかった。「秀光ビルド」は店長らがメールで機密情報を共有しており、会社として持ち出しを容認した可能性があり、不正競争防止法に違反する疑いがある。
格安で“憧れのマイホーム”を叶えてくれることで人気のローコストハウスメーカー。秀光ビルドは全国21府県に展開し、545人の従業員を抱える業界の“中堅”。一方のアイ工務店も社員数1351名で同じく中堅の企業と言える。
そんな同規模の2つのローコストハウスメーカーの間で、機密情報の”不正持ち出し”事件が起こっていた。秀光ビルドの関係者が語る。
「機密情報を持ち込んだのは30代のX氏。今年2月末までは競合ローコストハウスメーカー『アイ工務店』の愛媛支店・松山営業所に勤めていました。3月に秀光ビルドに入社。同じ愛媛県の西条店に配属されました。つまり、X氏は前職の機密情報を抜き取った上で、競合他社に転職したわけです」
実はX氏はもともと秀光ビルドの社員。2021年12月に一度退職し、アイ工務店に転職していた。1年あまりで“出戻り”となった形だ。
そんなX氏が持ち出した機密情報とは何だったのか。
「アイ工務店の顧客リストです。主に愛媛県内の顧客600人以上の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどが記されています。アイ工務店の愛媛支店全体の顧客情報を丸ごと抜き取ったと見られます」
小誌はX氏が不正に持ち出した顧客リストを手にした秀光ビルド幹部のメールを入手。同社の松山店店長は〈\(◎o◎)/!大漁や!〉と大喜びしていた。
不正競争防止法をめぐっては、大手回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を運営する「カッパ・クリエイト」の田辺公己社長(当時)が昨年9月に逮捕されている。田辺元社長は競合他社の「はま寿司」から同社に転職する際、仕入れ価格など営業秘密のデータを不正に入手。幹部に共有するなどしていた。組織的犯行が認められ、法人としてのカッパ社も両罰規定に基づいて立件された。