俳優の向井理が、現在放送中のドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)で、吉岡里帆演じる主人公を振り回す冷酷な男を演じ、話題を呼んでいる。これまで、NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』(2010年)の水木しげる役や、ドラマ『永遠の0』(15年)の特攻隊員役など、真面目で一本気な役を演じることが多く、好青年のイメージの強かった彼にとっては新境地といえる。きょう2月7日は、その向井の36歳の誕生日だ。
1982(昭和57)年神奈川県生まれ。明治大学農学部生命科学科を卒業後、都内のバーでバーテンダー兼店長として勤めていたところ、ある雑誌の「街のイケメン」という特集でとりあげられる。これがホリエージェンシーの女性マネージャーの目にとまり、スカウトされたのが、芸能界入りのきっかけとなった。デビュー当時については、このマネージャーの著書『向井理を捨てた理由』(田島未来著、マイナビ)に詳しい。それによると、向井は少しずつ知名度を高めていくのではなく、いきなり主役級でデビューさせるという計画のもと、2006(平成18)年、清涼飲料水のCMでデビュー。同年のドラマ『のだめカンタービレ』で俳優として存在感を印象づけた。その後も、マネージャーのプランにしたがい、バラエティに出演したり、女性誌『an・an』の表紙でヌードを披露したりと、多彩な魅力を醸し出していく。そして前出の朝ドラ『ゲゲゲの女房』で一躍スターダムに躍り出た。
最初のマネージャーが出産を機に事務所をやめてからも、主演ドラマ『ハングリー!』(12年)や『S‐最後の警官‐』(14年)、片桐はいりと姉弟を演じた映画『小野寺の弟・小野寺の姉』(14年)など話題作にあいついで出演。昨年(17年)には、企画に携わった映画『いつまた、君と ~何日君再来~』が公開された(尾野真千子主演、深川栄洋監督、脚本は『ゲゲゲの女房』の山本むつみ)。同作は、向井の祖母の手記をもとに、その人生を描いたもので、彼も自分の祖父の役で出演した。この準備のため、7年の歳月をかけたというところに、向井の情熱がうかがえる。
くだんのマネージャーは、向井について《彼のすごいところは、何が狙いかわかると、それに応じてきちんと仕事をしてくれることです》と書いた(『向井理を捨てた理由』)。それは現在も変わらないようだ。『きみが心に棲みついた』でも、主人公にいやがらせをするシーンの撮影中、カットがかかると「申し訳ないな」と心を痛めつつ、《でも少しでも抵抗を感じながら演じてしまうと面白くならないと思うので、演じる時は純粋に楽しんでやるようにしています》と語っている(番組公式サイト)。いやな性格の役にも真摯に取り組み、なりきってみせるのが、いかにも彼らしい。