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 今の活躍ぶりを見ていると肘の怪我を乗り越えたこと、トミージョン手術を行ったことさえも忘れそうになります。肘の傷はとても長い。10センチくらいでしょうか、縫い傷の跡が残っているんです。

 ロッカールームで「手術跡を少し見せてくれますか?」と聞いたら、にやっと笑いながら「ダメですよ(笑)。絶対に見せません」と答えてくれたのを思い出します。

 自分の傷や、苦しみや痛みを絶対に他に見せない。自分の中で閉じ込め、自らと向き合い解決していく。それを力に変えていく大谷翔平もいました。

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若かりし頃のの大谷翔平と筆者

「二刀流」という言葉を彼が極力使わない理由

「僕は二刀流をやっているとは思っていません。打って、投げて、走って。野球をやっているだけです」

 キャスター時代、大谷翔平に「二刀流は難しい、困難ですよね?」という質問は愚問でした。野球をやっているだけですから。二刀流という言葉を彼が極力使わない理由はここにある気がします。「二刀流」ではなく「野球」をやっている。野球全てのプレーを堪能している。

 だから時間を切り詰める、時間を無駄にしない、動いていない時は頭で想像する、イメージする。辛いなんて言わない、言っている暇はない、すべてプラスに転換させる……だからこそ人の何倍も時間を要するはずの二刀流を成功させている、ピークをここという時に合わせ、パフォーマンスを最大化させることが出来る。久しぶりに日本でプレーしてくれている大谷翔平選手を観て、色んな答え合わせが出来た気がしました。

 今でも牛丼を食べると……目の前でにこやかに、楽しそうに食事をしている大谷青年の顔を思い出す。そして、割りばしの箸袋にこんな文字が浮かび上がってくる…「時間は無限ではなく有限」だと。

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