3月9日、中国との初戦に臨んだ侍ジャパンは、8-1の快勝。世界一奪還を掲げるWBCで、白星発進を決めた。続く今日10日の夜には、最大のライバル・韓国との対決を控える。先発は、ダルビッシュ有が登板する予定だ。

 初日で先発出場した大谷翔平は、4回無失点&マルチ安打の活躍でチームの初戦勝利に貢献。試合直後のヒーローインタビューでは「ちょっと序盤は重かったけど打線がつながって良かった」と笑顔で答え、翌日の韓国戦に向け「先発はダルビッシュさんなので援護できるように頑張りたい」と意気込みを語った。

 ファン待望の“WBC初本塁打”に期待がかかる決戦を前に、世界最高峰の舞台・メジャーリーグで認められたその才能がいかにして育ったのか、「週刊文春」の特集記事を特別に公開する(初出:「週刊文春」2021年12月2日 年齢・肩書き等は公開時のまま)。

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「当時は(目標が)ぶっ飛んでると思ったが、目指していたから必然だった」

 大谷翔平(27)のメジャーリーグMVP獲得に際し、こうコメントしたのが母校・花巻東高(岩手)の野球部監督、佐々木洋氏(46)だ。恩師は大谷の才能をどう開花させていったのか。

佐々木監督が伝えた「投資」という考え方

 岩手県出身で佐々木監督と親交の深い漫画家の三田紀房氏が語る。

「彼は非常に負けず嫌いで、『絶対日本一になる』ということを常々、口にしています。言葉にすることでそれが当たり前になり、行動につなげられるのでしょう」

イチロー以来2人目の日本人MVP

 国士舘大野球部時代は寮を追い出されるほどやんちゃだったという佐々木監督だが、ある時転機が訪れる。

「自己啓発本の『思考は現実化する』(ナポレオン・ヒル著)を読み、感銘を受けたそうです。野球人として大成しなかった自分の後悔を味わわせたくないと、『0時間授業』と呼ばれる朝のミーティングでその内容を菊池雄星投手や大谷選手らに説いてきた」(スポーツライター・氏原英明氏)

高校の先輩の菊池

 大谷の野球への姿勢を育てたのは、そこでの「人間の行動は将来への『投資』と今だけの『消費』に分かれるから、人生の今後につながるものに多く投資しなさい」という言葉だった。