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〈WBC開幕〉「人間の行動は『投資』と『消費』に分かれる」大谷翔平を導いた花巻東・佐々木監督の言葉力

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「花巻東の選手はどうして物を考える力があるのかと問うと、この話を教えてくれました。そうした話をまとめ、指導バイブルのような厚い冊子を作っていますが、最初のページにこの言葉が書かれている」(同前)

「監督に言われると、親と同じことでも違って聞こえました」

 試合に出場することの“意味”についても教えていた。スポーツライターの安倍昌彦氏が振り返る。

「佐々木監督は『試合に出ている選手は野球をする権利を与えられているのだから、それに報いる義務がある』と、選手たちに口酸っぱく言ってました」

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 言葉の説得力に厚みを持たせるべく努力もする。

「選手に『準備をして全力を出しなさい』と何度も訴えかけています。彼はデータを集めることがすごく好きで、徹夜で対戦相手の分析をしたりと勝利に貪欲。そう言っている以上、自分も全力を出さないといけないと思っているのでしょう」(前出・三田氏)

 大谷自身も佐々木監督の言葉について「監督に言われると、親と同じことでも違って聞こえました」(「ナンバー」2019年8月8日号)と語っている。恩師が与えた「先入観は可能を不可能にする」という言葉は、今も大谷の胸に刻まれているという。

 

二刀流実現の背景にも佐々木監督の言葉があった

 その不可能とも思えた二刀流実現の背景にも佐々木監督の言葉があった。ドラフトで大谷を指名した日ハムに「メジャー入りも見据えて両方やらせてほしい」と熱く直訴したのだ。三田氏が当時の様子を語る。