記者席から、その「振る舞い」をずっと見ていた。
村上宗隆(ヤクルト)が、どんな表情で、何をしているかを。
なぜ、村上の姿を見ようと思ったか
3月11日のチェコ戦では、今大会初スタメンの山川穂高(西武)が安打を放つと、もはやチームみんなのパフォーマンスとなった「ペッパーミル」のポーズをした。
続く好機ではベンチから身を乗り出すように、仲間の打席を見つめた。
12日のオーストラリア戦。1番ヌートバー(カージナルス)が打席に回ると、村上はベンチでバットを持ち、準備を始める。2番近藤健介(ソフトバンク)に回る頃には立ち上がり、ベンチの中でバットを構え、打席でのタイミングなどをイメージしているように見えた。
表情は、さすがに少し元気がないようにうつる。大きなジェスチャーで大きな声を張り上げる、ヤクルトのベンチでの姿を知るファンからすると、ちょっと心配になるのかもしれない。
ただ、必死に前を向き、何とかしようとする気持ちは、十分に伝わってきた。
日本代表の「4番打者」である。
1次ラウンドの4試合で14打数2安打、打率1割4分3厘で、本塁打はゼロ。日本の4番という重圧、大谷翔平(エンゼルス)の直後を任されるプレッシャーの中で、“今のところ”は、結果を出せないでいる。
大会初安打を放ったチェコ戦後には「うれしかったです、素直に」「もちろん打ちたい。打つ、ランナーをかえしたいと思って毎回打席に立ってますし、その準備を怠っていないです。常にその思いは持ち続けているので、これから頑張ります」と話した。
なぜ、村上の姿を見ようと思ったか。
それは、栗山英樹監督が、このWBCという大会を通して、「侍ジャパン」の戦いを通して、見てくれる人たちにどんなことが伝わってほしいと考えているのかに関わってくるからだ。
監督は昨年末のインタビューでこんなことを話してくれた。
「落ちているゴミを拾おうとか、そういうことを口で教えるより、大谷翔平がゴミを拾う(姿を見る)ことのほうが、子どもたちにとってはそれがどういうことなのかよっぽど分かりやすいですよね。そういう意味でも、侍ジャパンは責任があるチームだと思っています」